ニコチンロイド

燃えよ剣のニコチンロイドのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.5
※2022.08.26再見
最近刀に凝り出して(と言っても刀工や刃文とかよりは拵や刀装具と言った実用品としての刀はどうあったかみたいなアレ)いるのでそういうところを中心に見返したらすごく良く出来ていて初回の時はちょっと斜に構えて見てしまっていたなあと反省。

なんか岡田土方はアンバランスに感じていたんですが、二尺八寸の之定(大体一般的な刀が二尺三寸前後と考えると五寸すなわち15.15cmも長い。すると刀の差し方も垂直に近い落とし差しでは刀を引き摺ってしまうので自然と横に、水平に近い差し方になる)に一尺九寸五分の堀川国広(原作の記述による)を再現すればああなるか。
それに近藤さん役の鈴木亮平氏のタッパもあるし。

清河暗殺失敗後のシーンでの土方vs芹沢鴨の剣戟が凄まじく良かった。
鞘を放り投げて気を散らしつつ芹沢の一撃を一回転しながら捌く土方の殺陣が見事過ぎて、この一連のシーンがこの映画のハイライトだなーと思った。
やっぱり前後編とかにしてもらいたかった。
もっとこの芹沢鴨に尺が欲しかったなあ。

あと「るろ剣」ですごい殺陣してた村上虹郎の以蔵さんが「るろ剣」における沖田の特徴的な構え、片手で握った刀を前に出して構える、をこの映画でもやっていて果たしてどっちを先に撮ったのかなあなんてことにも思い巡りました。


※以下初回鑑賞時の感想と隙自語

尺が足りないどころの話じゃねえなあ。
それに正直解釈違いというか物申したくなる部分が多かった。

岡田土方は最初はうーんと思いましたが、映画のラスト15分はかなり土方歳三でした。
それだけに、後半かなり巻いたのが残念でならない。
会津戦争とか見どころはもっとあるはずなんですが。宮古湾海戦のアボルダージュとか(撮影クソ難しいと思うけど)。

あと七里研之助めっちゃ別人でしたね。
くらやみ祭の下りとかトシの夜這いエピソードをザックリカットするのはまあいいと思うんですが、そのせいで佐絵殿が消えたので七里との因縁がすっげー薄味になっちゃってる。この辺も尺が足りないせいか。

とはいえ好きなポイントも多かった。
宵闇の京のシーンはどれも美しいし、なんかめっちゃ戸に小便するのもそういえばそんな描写出てきたわ(あれはああいうもんだったんですか?昔は)(夜這いの時に引き戸の音を立てないためのテクニックとして原作には出てきてましたが)と懐かしい気持ちになりました。

キャストも立板に水のようにしゃべる山崎丞やスムーズにアサシンみたいな動きをする斎藤一、たしかにジジイのイメージがあるけどジジイ過ぎるだろ!と思っていたらすごくいい味を出していた井上源三郎、気迫を感じさせる藤堂平助の表情などなかなか良い。

芹沢鴨も只の乱暴者ではなくインテリとしての顔も描かれていたので良かった。
新見錦も嫌な奴としての演技が印象に残る。

全くといっていいほど台詞もなければ活躍もしないけど髪型が独特なのでそれとわかる原田左之助とかうまいことやったねという部分も個人的には嫌いじゃない。
高圧的な登場をする割になんか勝手にヘラってる徳川慶喜、憔悴する松平容保、この辺りもなかなか。

そしてメインの3人、鈴木亮平の近藤勇の本人ぶり(白塗りズームはギャグだけどああ近藤勇だなあって感じた)、
山田涼介の病魔に侵されていく沖田総司の儚さ(ただもうちょっと剣の天才なところを見せてほしかった、ただ具合悪いだけの人じゃんなシーンが多かったのは残念)、
そしてラストシーンの土方歳三=岡田准一の格好良さは全く文句なしです。

一番好きなポイントとしては、抜き身の刀が登場するシーンはそれがどれだけ血みどろでもすべからく美しいのが良い。
刀と刀がぶつかり合って散る火花が美しい。
そこは素晴らしかったですね。