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ある船頭の話のdarumaのレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
3.9
オダギリジョー監督作品に惹かれて。映像美&濃い、メッセージ色が!オダギリさんは鈍牛倶楽部所属でちょうど最近木下グループ傘下だと知ったのですが、まさに!キノフィルムズ配給で製作総指揮が木下直哉さん。という事からも分かるように、(繰り返しになりますが)メッセージ性がとても強いです。船頭を物凄くいろんな意味に掛けている。橋ができると船頭は要らなくなる、古き良き物を大事にしようという事ばかりが良い事ではないが、いろいろ考えさせられる。

映像美はもうほんと凄くて…!山間の風景がとても美しく、特に霧のかかり方が神がかっています。ちょっと中国を思わせる。観ている間ずっと、これは誰が撮影しているんだろうと気になって、エンドロールを見たら外国の方で驚き。さっそく調べました…恋する惑星やブエノスアイレスを撮った方なのか!!(激しく納得。香港映画ですよね。後者は確か観ています、記憶は曖昧だけど)この方を連れてきただけでも凄いと思う…引き(遠景)の映像がかなり多くて自然美を最大限に生かしている、お金かかってるんじゃないかな?(よく分からないけど、アクションとかもだけど引きの画ってお金も時間もかかりそうな感じがする、イメージだけど)

脚本はオダギリ監督が長年温められただけあって、一見ストレートに見えますが少しひねりが効いています(ラスト想定してた通りになるかと思いきや、おっ!?そっち…といった感じ。それもあるなとは思った)演出がやや過剰な部分もありますが(声の重ね方など)、全体のトーンが落ち着いているのでそこまで食傷という感じではない。少し眠い時間帯に観たせいか、やや長いかな…?という感じはありましたが。あと!序盤物凄く舞台っぽい感じがします。台詞が少ないのと引きが多いせいかな…?観ながらずっとそれも気になって考えてたんだけど(逆に引きだと映像っぽくなるか?とか)、話が展開するに連れてだんだんわからなくなって、気にならなくなりました。監督が役者さんなので敢えてアップが少ないのかな?(役者の演技を信頼しているというか。)でも後半は必要な所でちゃんと表情がわかります。あと場面転換をフェードアウト気味に暗転するせいもあるかも。それとまた映像の話に戻りますが、色味がとても綺麗なので深夜に真っ暗にして観ると最高です(中川龍太郎監督系)。

役者さんは柄本明さんが主人公の船頭さんを演じています。見事すぎます!!キャラクターが絶妙にマッチしすぎている。ただ単に人の良さが出ているだけではなく(勿論それはベースにありますが)、人間の業みたいなものを表すのがとても上手な方。舟を漕ぐ姿も巧みすぎる。かなり練習されたのかな…?途中で物凄く柄本時生くんに似てる人が出てくるのですが、クレジットには居なかったから別の人かな?水牛を引いてました(てっきり親子共演だと思い込み、笑)

船頭さんと仲のいい村人の青年を村上虹郎くん。めちゃくちゃいい味出してます!彼はドラマ「仰げば尊し」から好きな役者さんですが(もうかなり前だ)いつもほんと安定の良さ。ちゃきちゃき(って男性には使わないかな?)とした感じとたまにフックのある間(ま)が巧い。ソワレを観ていたので流れ着く女の子が芋生さんかと思いました…(違った)川島鈴遥さん、名前は聞いた事ありますが演技は初めて観ました。凄く重要な役ですがとても良かったです。

脇もめちゃくちゃ豪華!渡し舟の話なのでお客さんがたくさん出てくるのですが、浅野忠信さん、草笛光子さん、村上淳さん(ここはほんとの親子共演!^^)、伊原剛志さん、蒼井優さんなどなど。永瀬正敏さん、橋爪功さんが重要な役を演じられています。橋爪さんがなんか凄くよかったです(私結構橋爪さんの出演作品で彼をいいと思う事が多いような気がする…実際大ベテランの物凄い方ですが!)

役者さんが映画監督をされているという点について、私がまず思い出すのは齊藤工さんです(blank13がマイベストムービーです!観たのがFilmarksを始める前なのでレビューは無いですが)。本作に細野晴臣さんが出演されているのでそれもあって浮かびました(細野さんは斎藤さんの出演ドラマに出られています)。彼の作品とはわりと対照的と言いますか、齊藤監督が喜劇寄り(な所が物凄く好きです!笑いの中に哀愁や真実を浮かび上がらせる系)に対してオダギリ監督はド直球真骨頂社会派です(表現は悪いかもですがめちゃめちゃ褒めてます!でも面白シーンもあります、と一応補足)俳優としてもわりと癖のある役を演じられている印象がありますが、まさにその路線。でもそれがいいんです!スッキリ解決系ではなく、もやっと来るので印象に残る。どちらも好みです。また監督作品を観てみたい!と思いました。NHKで監督・脚本のドラマが9月に放送されるのでその予習も兼ねて観ましたが、とても楽しみです。

個人的に、船頭は、乗っている人の命を預かっている、つまりその人の命をどうとでもできる…(殺すも生かすもあなた次第)
それがこの作品の醍醐味だと思いました。
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