よーだ育休中

屍人荘の殺人のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)
2.5
神紅大学ミステリ愛好会に所属する明智(中村倫也)と葉村(神木隆之介)は、探偵少女の剣崎(浜辺美波)から「ロックフェス研究会に届いた脅迫文書を調査するため、夏合宿に帯同して欲しい。」と依頼を受ける。過去に失踪者が出たという曰く付きの夏合宿で、誰も予期していなかった惨劇が起こる。


◆斬新さが勝利した原作小説(ネタバレ有)

「このミス」を始め、2018年のミステリ文学に対する各賞を受賞した文学作品を映像化した作品。探偵・犯人・被害者を含めた複数名を外界から隔離された環境下に集め、事件の発生から推理・解決に至るまでを描く所謂《クローズド・サークル》を取り扱ったミステリ。

《嵐の孤島》《吹雪の山荘》《長距離列車》《豪華客船》など、あらゆる密室劇が制作されてきたジャンルではありますが、今作はその斬新な設定故に原作小説を読んだ時には思わず唸ってしまいました。

山間部で行われる《野外フェス》が題材となっており、登場人物たちが寝泊まりしている《洋館》がクローズド・サークルとして機能するのですが、《自然災害》や《インフラの断絶》などではなく《ゾンビの発生》によってクローズド・サークルが形成されている点が非常に面白い。

ミステリ作品かと思いきや、あまりにも唐突なファンタジー展開に最初は戸惑ったものの、《ゾンビ×連続殺人事件》という発想と、都合のいいところで《クローズド・サークルが縮小する展開》は新しい。(洋館の1階が占拠された!等)

ゾンビが舞台装置や凶器として用いられる展開、復讐劇において《標的を二度殺せる》犯人側のメリットなど、興味深く読んだ記憶があります。


◆映像化で陳腐化してしまった原作小説

今作は《映像作品》には向かなかった。《ゾンビ》というコンテンツは広く認知されており、視覚的にもインパクトが強いため、映像作品でゾンビが出てきてしまうとその時点でもう《ミステリ作品》ではなく《ゾンビ映画》になってしまいます。

舞台装置として《ゾンビ》を機能させるためには、彼らに《意外性》を求めてはいけません。驚異であると同時に、単純な行動原理、愚鈍で一定の距離を置いてさえいれば危険の少ないものである必要があります。そうすると《ゾンビ映画》としてはつまらない陳腐な物になってしまう。

ゾンビを撃退するにあたって、XP画像風のフィルターを用いることでブラックジョークっぽくしていましたが、あれが限界だったのかな。

明智さんの最後のシーンは特に酷かった。原作の方がずっと良かった。監督は中村倫也に謝った方がいいと思う。

浜辺美波と山田杏奈の可愛いさだけで何とか二時間もった作品でした。