にしやん

ブラインドスポッティングのにしやんのレビュー・感想・評価

ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)
3.7
黒人男性射殺事件で揺れたカリフォルニア州オークランドが舞台の、小学生から一緒に育ってきた仲のええ黒人と白人二人を取り巻く人種の壁とそれぞれの日常のイライラと不安をユーモア交えながら、リアルに描いた 社会派ドラマやな。

一風変わった人種差別映画やな。人種差別そのものちゅうよりも人種のイメージによる差別をテーマにしてるわ。街の引越し屋で働く、黒人と白人の地元ブルーカラーの仲良し2人組が、表面的なもんでは意見が一致してたかて、実際に見えてるもんは結構違てて、黒人が遭遇したある事件をきっかけにすれ違いが生まれるっちゅうんが映画の大まかな流れや。「ブラインドスポッティング(=盲点)」っちゅうタイトルが、この映画を端的に言い表してんな。2人それぞれが見えてへんとこって何や?がこの映画の肝やな。

同じ街に生まれて育ち、同じ仕事、同じ趣味、同じ人生を歩んできた兄弟みたいな二人やのに、黒人と白人とでは社会やコミュニティーから見られるイメージが全然ちゃう。それやのに、二人ともその明らかな違いを当たり前だと思って、見過ごすように日常を過ごしてるっちゅうは「盲点」以外の何もんでもないやろ。

黒人は夜に街ブラついてるだけで警官から職務質問受けそうになったり、それどころか警官にいつ銃撃されるか分からん恐怖があんねんな。それと白人と一緒に悪いことしたかて捕まんのは黒人だけやとかな。主人公の黒人にしたかて、髪型はブレイズやけど、中身は結構真面目や。それやのに黒人っちゅうだけで偏見や先入観を持たれる辛さがあるわ。せやけど、まあ、この辺はいろんな映画で言い倒されてるわな。

この映画のおもろいとこは、不良の白人の鬱屈にも焦点が当てられてるとこや。もう一人の白人のほうは見た目でもめちゃめちゃ分かりやすい不良というか、はっきり言うて殆んどチンピラやな。彼は元々黒人が多い街で数少ない白人として育って、黒人たちとも共存しながら生きるこの街の住民としてそれなりに自信や誇りをもってやってきたのに、最近は高所得層の他所もんがどんどん街になだれ込んできて、かつてのコミュニティが壊れつつあることに心底イライラを募らせてるな。それに、街のダイバーシティ化も凄いな。映画でも中国系やインド系も出て来てたし。アメリカの各地に居る地元の、どちらかと言えば低所得層の白人の抱える悩みや葛藤なんかは相当なもんやと思うわ。その辺も、確かに「盲点」やで。

新しいもんに不寛容な白人と、それに対して新しいもんに寛容な黒人っていうところも、「青汁」を使て上手いこと描いてたな。それと子供の使った演出も非常に上手いわ。突然降りかかってくる銃社会の恐怖や、いまだに社会にしみ込んでる人種差別の本質みたいなもんにもドキッとしてしもたわ。

こんな「盲点」だらけの社会の中でわし等庶民はどないして生きていったらええんやという問いに対して、はっきりとした答えはこの映画にはあれへんかったけど、ややこしさを抱えたままでも、わし等は前向きに生きていくしかないんやちゅうことやろ。大変重いテーマにも関わらず、明るく、テンポよく飽きさせることもなく、笑えるシーンも多いしな。それにラスト含め、説教臭ないところもなかなかええセンスやわ。ストーリーをもうちょっと盛り上げる工夫があったら言うことなかったのにな。この映画の監督さん、本作が長編初みたいや。これから期待やな。
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