すず

Fukushima 50のすずのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
5.0
今この場所で暮らせていることに感謝

試写会にて一足先に鑑賞。

あの日、日本にいたなら観るべき作品。
ただし、心に無理をしてまで観ることはない。思い出したくない人もいるだろうから。




あの日から9年…
津波、被災者、ドキュメンタリーの作品は過去にも作られてきたが、とうとう【福島原発事故】に真正面から向き合った作品がきた。

2011年3月11日14時46分
緊急地震速報
その映像、あの音だけで涙が出そうになる。人によって東日本大震災の記憶は違うと思う。【地震】【津波】【原発事故】私にとっては【地震】だ。体験したあの日の怖さ、危機感を感じるあの音にいまだ体が反応していることを実感した。

開始早々から空気が張り詰める。
タイトルが出る頃には【地震】【津波】は終わっていた。これから【原発】の話になっていくのかと身が引き締まる。すでに涙が出ていた。


【原発】は体験した訳じゃないからニュースで知り得た知識程度だ。かなり忘れてしまっていたんだな…。知らないこと、わかっていなかったことも多かった。色々用語が出てくるが大体理解できるようになる。字幕説明があると尚良かった。置いていかれそうだなと思った人は下に用語集を記しているのでチェックしてから観てみてください。


映画には2つの側面があると思っている。【芸術】と【記録】。この映画は、【記録】の側面が大きい。多少脚色している部分はあるかもしれない。だけど、わざとらしい感動ものには感じなかった。(すいません、ありました。海外の支援はドラマっぽかったです)淡々と事実をなぞっていて緊迫感、制作陣の意気込みはかなり伝わってきた。


現場、本店、官邸と様々な人間が自分の責務を果たそうとする。しかし、官邸の行動や指示の裏側でこんなことが起きていたとは…。渡辺謙の苛立ち同様こちらもイライラさせられた。


そんな官邸でも総理の発言に決意と覚悟が感じられる場面もあった。ただそれ以上に現場の覚悟は相当なものであったと涙なしでは観られなかった。


フィクションならどんなに良かったか。フィクションならば面白いと言えるのに。だけど、これはノンフィクションなのだ。映画のような出来事がどんどん起こったのだ。奇跡のようなことも起きたのだ。恐怖と覚悟の狭間で守り続けた現場に感謝こそすれど、とても面白いとは口にできない。


原作は2012年に発行された「死の淵を見た男」。そんな本があることすら知らなかった。すぐさま買ってしまった。どれくらい事実だったのか確かめて、公開後、改めて観直したい。


スコアは付けるつもりなかったが、誰かの観るきっかけになるならば…
多くの人にこの事実が届くことを願います。


映像化してくれてありがとうございました。


📝これだけは押さえたい用語集📝
試写会の時に頂いた無料冊子から転記

⬛イチエフ
福島第一原子力発電所の略称。

⬛SBO
全交流電源喪失。原子炉を冷却する電気が完全になくなったこと。

⬛メルトダウン
燃料が壊れて炉心が溶けてしまうこと。原子炉の燃料炉心損傷ともいう。

⬛ベント
原子炉の格納容器の中の「圧」を外に逃がすことだが、周辺地域に「放射能汚染をもたらす」ことでもある。

⬛スクラム
原子炉が緊急停止すること。原子炉は、地震などの揺れや異常事態に遭遇した時に、自動的に炉心に制御棒が入り、停止する仕組みになっている。

⬛MO弁
原子炉建屋の2階にある電動のバルブ。

⬛サプレッション・チェンバー
格納容器の圧力を調節する圧力制御室のこと。略してサプチャンという。

⬛AO弁
サプレッション・チェンバーの上についているバルブ。空気作動弁ともいう。
すず

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