叡福寺清子

アルファ、殺しの権利の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

アルファ、殺しの権利(2018年製作の映画)
3.0
またふざけた邦題付けやがってと思ったら原題のまんまで,ちょっと面食らった三遊亭呼延灼です.こんばんわ.
ドゥテルテ大統領が麻薬撲滅戦争を仕掛けた時代の比国.往来では薬物所持検査のための検問が何箇所も設けられ,警察も組織潰しに全力を傾けます.時には超法規的手法が取られることもあり,結局その政策は現在では失敗との評価が一般的でございます.

おりしもエスピノ班長の密告者イライジャの協力の元,組織のアジト襲撃作戦が実行されました.が,イライジャとエスピノ班長は組織の上前をはねる段取りをつけており,現金と麻薬をポッケナイナイします.本作はその後の二人の日常と犯行を,ドキュメンタリ風に撮り続けます.
対照的な二人の生活環境.班長は二人の愛娘に囲まれ,その二人の通う学校の父兄活動にも積極的に参加し,寄付すらいたします.さらには一度に10万ペソ(比国の平均年収が23万ペソ)の入金ができるほどに金銭的な余裕がございました.
一方,密告者のイライジャにも娘が一人おりますが,その住居は,廃品業者を営んでいるとはいえゴミに囲まれ,哺乳瓶も薄汚れていました.
ですが皮肉な事に命の価値は,どちらもすごく軽かったのです.

ドキュメンタリ風ということで「エンド・オブ・ウォッチ」を連想される方もいらっしゃいましょうが,そんな派手な事は起こりません.麻薬を鳩の脚に巻き付けたり,麻薬を赤ちゃんのおむつの中に隠したり,裏金を子供部屋に隠したり,汚職警官には厳しく対処すると号令している警察署長に賄賂するくらいです・・・って文字にするととんでもねぇロクでなしでございますね.

なお,タイトルの意味は最後まで回収できませんでした.どなたか教えていただけませんかしらね.ほんとに.