叡福寺清子

またヴィンセントは襲われるの叡福寺清子のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ある日突然,何の前触れもなく,色んな人から暴力を受けるようになったヴィンセントさん.どうやら目を合わせたら何かのスイッチが入るようで,老若男女の誰からも攻撃に晒されるとあっては,真っ当な社会生活は送れません.ってことで田舎の別荘に移り,人との接触は可能な限り排除した隠遁生活を送ろうとしますが・・・

表面的には新手のパンデミック系ですが,突然の暴力が象徴しているものを考えたら,もうちょっと作品に深みが出るのではないでしょうか.
では何を象徴しているのか.それはズバリ,ネット・・・というかSNSで展開される炎上ではないでしょうか.最近でも,産休に入る女性が職場に「産休クッキー」なるものを配った旨を投稿したところ,「不妊の方に配慮がない」やら「産休なんて当たり前なんだから気遣い無用」とかって理由で炎上いたしました.まさに赤の他人が,勝手に視野に入ってきて言葉の暴力を振るう.ヴィンセントさんと妊婦さんの立場が重なってみえました.
ヴィンセントさんに暴力をふるった人物は,一度冷静になると自分が暴行したことを憶えておらず,何事もなかったように社会生活を営みます.例えば,群馬県草津町の某町議によるセクハラ告発に連動して下劣なフェミニストが,草津町をセカンドレイプの町と罵詈雑言を浴びせましたが,告発自体が虚偽をわかった瞬間に自分達の行動が無かったかのように振る舞う姿に似てるじゃんと,読み取ってしまいました.
視聴された多くの方がサングラスしたらいいじゃねの?と思われた事でしょう.ですが作中,ヴィンセントさんをはじめ,同様な被害にあわれた方は誰も,そんな対処しようとしませんでした.だって,SNSの暴力なんて対処法がないから,です.自分のどんな発言が炎上きっかけになるか,なんて誰にも予想できません.そんなもんに対処法なんてあるわけございませんでしょう.もちろん,バイトテロのように,当然炎上するような投稿もございますが,産後クッキーのように何気ない投稿が火種になるなんて,予想できないですよね.
また,匿名性が高いSNSでは,一番近しい人が被害者あるいは加害者なのかもしれません.それはダイナーで知り合った女性が暴力を振るったり,またはヴィンセントさんが加害者になったり,という姿で表現されていました.

炎上騒ぎを回避するための最大で最高の方策はSNSなんてやらない事.ヨットで社会から逃避した二人の姿は,SNSに疲れた現代人がSNSから離れる姿と重なりました.SNSをSocial Networking Serviceと名付けた方も,まさかこんな皮肉な映画が製作されるとは思っていなかったでしょうね.ノシ.