geminidoors

足跡はかき消してのgeminidoorsのレビュー・感想・評価

足跡はかき消して(2018年製作の映画)
4.5
自分にはなんか文字にしたくない位に響いた。
山奥で森に暮らさざる得ない気持ち。
妻を亡くした後、娘を或る見方をしたら丁寧に育てた父親の気持ち。
良い人に逢えて親切を受けても尚、社会的な関係性を避けよう逃れようとしてしまう"どうしようもなさ"。
対して、年頃に成り自我の目覚めと内側で闘いながら、寧ろ問題を抱えているのは父親側だと判りつつも何回も何回も堪えて着いていくゆく娘。
堪えながら父を無碍に出来ず、黙って支度する娘の姿に不図涙腺が緩んでしまった。
(あゝ文字にすると、なんて嘘っぽいんだろうか…)
私自身にも、そんな娘が居るから。
こんな話には至極弱いんだろう。



最終局は一寸急ぎ過ぎたまとめ方で惜しいとは思うけど…
ついぞ"この森で天使はバスを降りた"のパーシーを思い出した。同じ様な場面が有る。
或る言い方をしたら少し幼稚な作品かも知れないが、自分はあの作品をなんて好きなんだろうかと想ったりする。
何故だか実によく思い出したりするのだ。
両作品共に、遠巻きに帰還兵の後遺症を通して戦争批判していて、それがいやらしかったりあざといならば引いてしまう処。しかし転開上の題材やプロット止まりにはしておらず、脇役や絡みもさり気なく有り、非常に上手い仕上がりだと私は思う。

抑制された演出演技は出演者全員がそうであり、森の静謐さと相まって作品全体を包んでいる。
だからこそ実際に視聴する画面の外=過去や現在やこの先の未来に想いを馳せたりさせるのだろう。
それは、自分にとっては味わい深い作品として記憶に残る条件であったりする。

配役も好きだし、森の撮り方もいい。
靄も雨も、苔や羊歯も。リアルでいい。
娘役の若い女優は今後も活躍するだろう相当な器(原石)に感じられた。
好きな俳優フォスターも抑えた上手い演技で深い峡谷の様な拒絶的な精神を演じていた。

本作は川の流れで喩えたら、親子の話は物語の男流。目で見える流れだ。
奥に流れ渦巻く女流は、個人的には父娘それぞれの、否言ってしまえばヒトが懸命に生きてゆく上での"どうにもならなさ"だと感じた。

だから言うなれば"信じれる作品"にワタシには捉えられるんだ。
だからかなり好きだ。
geminidoors

geminidoors