にしやん

ダンスウィズミーのにしやんのレビュー・感想・評価

ダンスウィズミー(2019年製作の映画)
2.5
「突然歌って踊り出すやなんてヤバいんちゃうん?」と、ミュージカル映画における暗黙の了解にツッコミを入れた邦画のミュージカル・コメディや。

そもそも、この映画はミュージカル映画なんやろか? 普通ミュージカル映画ちゅうたら、歌に登場人物のセリフや感情が反映されるんやけど、これは「音楽が流れると踊り出す」というだけで、登場人物のセリフや感情は反映されてへん。ただ歌って踊ってるだけや。ミュージカル映画が苦手な人にはええかもしれへんけど、まあ、わしもそないにミュージカル映画が好きやっていうことはないねんけど、そんなわしでもこの映画はいまいちやったわ。特に、本作のウリのミュージカルシーンについては、全部とは言わんけど、はっきり言うて赤点やな。

歌そのもんのチョイスは悪ないねん。「Happy Valley」「狙いうち」「タイムマシンにおねがい」とかは、そこそこええんとちゃうかな。せやけど、ミュージカルシーンそのもんの見せ方がアカンわ。ミュージカルシーンだけで見たら、ミュージカル映画史上最低かもしれんで。ミュージカルになってへん。年末の紅白とか昔の正月の芸能人かくし芸大会殆ど変わらへんレベルやと言うても言い過ぎやない。そこそこマシやったんは、最初のマンションのエントランスのシーンとオフィスのシーンだけや。マンションのほうは清掃業者の目線から主人公の静香が踊ってるシーンを見せられるんやけど、これは中々上手い見せ方やなと思たわ。オフィスのほうは唯一ミュージカルらしいミュージカルシーンやったわ。本作で一番ええシーンや。この勢いのまま進んでいったらそこそこ良かったんやろけどな。でもそこを予告編で見せてしもてるんも辛いわ。この後、これ以上のミュージカルシーンはいっこもあれへんからな。大失速やわ。

高級レストランのシーン、あれは無いわ。テーブルクロスとか、シャンデリアとかの小細工は要らんねんって。ミュージカルとして絶対無いわ。それと全体的に言えるけど。楽曲になんでアレンジした曲を使うんよ。特に「狙いうち」なんかは、オリジナル曲が断然格好ええのに、アレンジしてしもたら曲が台無しや。オリジナルの方がリズム速いし、あそこにタップダンスとかさせたらめっちゃ格好ええのにアホとちゃうか?それに、山本リンダのダンスをそのまま物真似みたいにやらしたほうが絶対おもろいのにな。分かってないわ。

あとは、新潟に行く途中の半グレのシーン。そもそもこのシーンでの踊りの振り付けが破滅的に下手くそ。踊りと曲がいっこも合うてへん。だいち、曲のジャンルとかも他の曲とは全然ちゃうし不自然やわ。これひょっとしたら「LDH」のパロディかいな?そんなしょーもないことやってやんと、ミュージカルちゃんとやってからにせーよ。このシーン、マジで要らん。

ストーリーかて全然アカン。とにかく要らんもんが多すぎる。まず、道中の半グレのシーン要らんし、車盗られるんも要らんし、はっきり言うて街金トリオも余計やろ。要らんもんは仰山あんのに、逆に肝心要の伏線の回収が殆ど出来てへん。まず、催眠術師の借金はどうなったんや。それからレストランの損害賠償かて凄いぞ。自分らしく生きようという結論は悪ないねんけど、これではちょっとご都合主義が過ぎるんとちゃう。振られた男かて意味不明やろ。手放しでハッピーエンドという風には受け入れにくいな。

それと、これも全体的に言えんねんけど、通常のミュージカル映画の場合ミュージカルシーンの部分とドラマの部分とは、雰囲気をガラッと変えてちゃんとメリハリをつけんねんけど、本作がそれが殆どできてへん。 虚構と現実の境目があいまいやねん。やっぱり、この映画は純粋な意味ではミュージカル映画やないんやろな。作品の中で音楽が扱われてるだけで、あくまでもセリフ・演技と音楽とは別物として区分けされてるもんな。これはミュージカルやなく、音楽映画やねん。昭和の映画全盛期にようあった、美空ひばり、舟木一夫、裕次郎やら、坂本九、吉永小百合がやってた「青春歌謡映画」に近いもんかもしれんな。ミュージカル映画としては、ごっつ物足らんわ。

それと、自分等で「コメディ・ミュージカル」と言うてる割りには、笑えるシーンがあれへんのも頂けん。コメディ要素がそもそも少ないんとちゃう?それともわしと笑いのセンスがちゃうんやろか。どれもこれも笑えるとこがあれへんのが辛いわ。

日本ではミュージカル映画の成功が難しいって昔から言われてるみたいやから、それに挑戦しようという気持ちは評価するけどな。せやけど、本作について、わしとしての感想を一言でいうたら、つまらなずぎて退屈やったっちゅうことや。まあ、ミュージカルを撮ったことあれへん人が、作ったっらこないなるってことかいな。それだけやな。
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