にしやん

ロケットマンのにしやんのレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
3.0
これまでに「グラミー賞」受賞5回、シングルとアルバムの総売り上げ枚数は2億5千万枚以上という、世界的超メジャーミュージシャン、エルトン・ジョンの1950年代から1991年初頭迄を描いたミュージカル映画や。 エルトン・ジョンはまだ健在で現在72歳やな。自分の半生記をこういう映像として見せられるってどんな感じなんやろな。自分のことやと、果たして思えるんやろか?本人が製作総指揮やねんから全部チェックして了解済みなんやろ。

この映画のウリは、音楽、それもタロン・エガート本人が実際に歌てる生歌やということ。実際そこそこ歌唱力はある。それと、実際にワンカットかどうかは分からんけど、ミュージカルシーンをワンカット風に見せてるとこやろ。この映画の特に前半、ミュージカルとしてもオーソドックスな作りやな。ドラマの部分ででエルトンジョンがピアノを弾いて、歌い出したりするとトーンが変って、家族や共演者等が歌い始めたりとか、他には一気に転調してダンサー仰山が加わきたりとかしてたわ。遊園地の「Saturday Night's All Right For Fighting」とかがそれやな。このシーンはミュージカルらしいて良かったわ。

ミュージカルの部分や無しにドラマのほうは、あんまり新鮮味はなく、この手の映画の定番のパターンや。家族からの愛に飢えていた幼少から少年期、才能が開花する青年期、デビューまでの苦労、その後ブレイクして一気にスターダムにのし上がり、その後はお決まりの恋人との仲違いやら仲間との揉め事があって、酒とドラッグに嵌っていくパターンや。

本作について、ホンマは成功するまでの時代をもっとしっかり描いとけば、映画としてもうちょっとドラマティックな印象もあったんやろけど、この映画は成功した後の彼が堕ちていくところに結構重点が置かれてて、またさらにそれをひつこいくらい後半の殆どをそれに費やしてしもてるさかい、途中からは音楽映画かなんかよう分からんようになってしもてる。正直言って飽きてくるわ。中盤から後半にかけて良かったんは、一気にブレイクするきっかけのロサンゼルスにある伝説的なライブハウス(名前忘れた)でのライブシーンくらいかな。

あと、「ボヘミアン・ラプソディ」にも登場してて、途中からエルトンがマネージメントを任してたジョン・リードって人、この人後半かなり悪く描かれてんねんけど、これかてエルトン・ジョン本人の意思っちゅうことやろな。もしそやとしたら、相当恨んでるな。せやけど、少なくても一時は自分が愛してた相手やねんから、こういうんは見てて好かんわ。ちょっと不快や。

ということで、後半は、エルトンが唯々堕ちていくだけや。好きやったマネージャーには振られ、相棒やった作詞家にも去られ、延々酒とクスリに溺れる毎日やな。とにかく、この後半が思いのほか長過ぎで、映画としていっこもおもろないねん。 後半、わしホンマ腕時計ばっかり見てたわ。

監督が同じ、物語の構造が殆ど同じということもあって、どうしても「ボヘミアン・ラプソディ」と比較されてまうんやろけど、QUEENは誰でも知っているキャッチーでインパクトが強い楽曲が多いのに対して、エルトン・ジョンはヴィジュアルは派手やけど、、曲のインパクトではQUEENと比べてパワー不足が否めへんわ。それに、「ボヘミアン・ラプソディ」はラストにLIVE AIDを持ってきてるんに対して、こっちはラストの圧倒的な音楽があれへんさかい、なんか映画も尻切れトンボな印象やしな。

それと、細かいことやけど、ミュージカルそのもんというよりも、ドラマからミュージカルへの移行もドン臭く、セリフから曲へ切り替わるところにもちょっと違和感が合ったりすんのも頂けん。それに、エルトン・ジョンの曲がその場面にピッタリ合うてるかっちゅうたら、いまいちしっくりこうへんのも多いんとちゃうかな。

前半はオーソドックスなミュージカル、後半は唯々堕ちていくエルトンをダラダラと描いてる。基本は音楽映画やのに、作品として全体的にはまとまってへんっていうんが率直な感想や。作詞家バーニー・トーピン役ジェイミー・ベル、エルトンの母親役にブライス・ダラス・ハワードとか、めっちゃええ役者をキャスティングしてんのに生かしきれてへんのは、ホンマもったいない。前半の描き方をそのまま最後まで通すべきやったんとちゃうかな。早い時間帯のシーンやけど、あの名曲「Your Song」が誕生するシーン、わしにとっては実質あのシーンがこの映画のクライマックスやったわ。

「ボヘミアン・ラプソディ」かて粗は仰山ある映画やと思うけど、それを補って余りある見せ場も仰山あるわ。せやけど、本作はリスクの少ない手堅い映画で、その分、強烈さっちゅうか人をいまいち惹きつけるもんがないと思たわ。全然アカン訳ではないねんけどな。レヴューの点数や評価はそこそこええのに、全米興業の初週で「ボヘミアン・ラプソディ」の半分しか数字があげられへんかった原因もその辺にあるんとちゃうかな。わしの期待がそこそこ大きかったからかもしれんな。ちょっと残念やったわ。
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