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幸福なラザロのcのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.2
「幸福なラザロ」、このタイトルに託した監督の意図は何だったんだろう、と考える。

ラザロが考えていること、信じていることは誰にもわからず、彼が最も求めていたことは果たして何だったのか。ラザロはこの世の中で苦しさ、怒り、感情そのものに名をつけて認識することもなく、気づくことすらできない功徳ばかりの人生だったのではないか。そればかりなのに、彼が信じていたのは、私たちと似ているところもあるようなわかりあえない他人のことばかりだ。

ラザロを目にし、涙を流し、膝をつく彼女の祈りのような姿に涙が出そうになった。彼の無垢さや純粋さに縋る。私たちとはかけ離れていて、清々しくあり続けるラザロは私たちが本来持ち合わせていたかもしれない欠片を持ち合わせているからだろうか。その姿を見て、私たちはどう思うのか。まさにラザロを目にし、私たちは裸のように不完全な人であることを思い知らせる。この感情が果たして崇拝なのか、尊敬なのかは誰にも明確にはわからないはずだ。
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