回想シーンでご飯3杯いける

マイ・ハッピー・ファミリーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.6
1991年にソ連から独立したばかりの国ジョージアを舞台に、3世代同居家族の姿を描く。

主人公である母マナナ(50代)の誕生会のシーンが秀逸だ。主役はマナナのはずだが、実際に集まるのは夫の友人ばかり。本人は望まない、夫の面目の為に開かれた誕生会が、夫の無邪気な身勝手さと、マナナのストレスを見事に表現している。

一緒に暮らす母親や子供達も身勝手で、そのしわ寄せはいつもマナナにのしかかってくる。それに嫌気がさした彼女は、遂に家を出て小さなアパートで独り暮らしをはじめるのだが、家族のしわ寄せはそのアパートにも及んできて、、、。

ドライな作風ながら、マナナの苦痛を淡々と描き出す脚本がとにかく秀逸。日本の是枝裕和や橋口亮輔、あるいはカナダのグザヴィエ・ドランに近い作風と言えば良いか。

テーマをひと言で表すとすれば母の独立。作品内では、主人公にまだ平穏な日々が訪れていないが、残してきた家族も含めて少しずつ変化していくであろう事を匂わせる。それはもしかするとジョージアと旧ソ連の関係を比喩しているのかもしれない。