松井の天井直撃ホームラン

港町の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

港町(2018年製作の映画)
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↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。

☆☆☆★★★

観察第1章 漁〜販売・消費

高齢の漁師は嘆く。昔と比べて魚が獲れなくなった事を。
折角獲った魚を売っても、網の修理の方が高くつく事を。
カメラは漁の一部始終を撮る。必死にもがき苦しむ魚達。生と死とが隣り合わせの瞬間を実感する。

獲れた魚の競りが始まる。そのスピードと同時に垣間見られる人間模様が面白い。

次々と捌かれて行く魚達。鮮度が命だけに、その見事な手捌きにはつい見惚れてしまう。
あ?穴子が逃げた!

後期高齢者のおかあさんは、顧客の生活環境等を大体把握している。

もしも何らかの自体が起きた時は…。

高齢者の多い地域ならば。この様な個人個人の連絡網が、万が一の非常事態の際に頼らざるを得ないのかも知れない。
なるべくならばそうならない様に、自治体での取り組みを願う他は無い。

観察第2章 人の歴史〜親子&港町の現状

映画は後半、それまでに何度か登場していた、話好きなおばあさんに密着する。
このおばあさんを通じて、島の現状で有ったり。ちょっと噂好きなところが有るので、「そこまで言わんでも…」と言った場面を挟みながら、エンディングへと突き進む。

このおばあさんのキャラクターが、次第次第に明らかになるのが圧巻で。思わず魅入ってしまうくらいに面白い。

このおばあさんの言っている事が、どこまで本当なのか?は、観た人の判断にお任せするとして。この作品全体が面白くなったのは間違いない。
但し、その反面。ドキュメンタリーとしての終着点が、ぼやけてしまう結果になったのは痛し痒し…と言ったところだろうか。
本来ならば、もっと島の現状。例えば、人口流出・高齢者問題。更には後継者不足…等の問題を、もっとはっきりと炙り出さなければいけなかったと思うのだけれど。

…とは言え、ドキュメンタリーは生モノで有るのは明らか。
それこそ魚で言えば【刺身】の様なモノだ!
素材さえ良ければ、そこに余分な付け合わせ等は要らない。小洒落たレストランが気取って出す《…○◉▽を添えて》…等とゆう料理は、素材本来が1番の刺身からしたら全く無意味なのと同じ事。
「こっちに行った方が面白いかも?」と思った方向へ舵を切った事で、作品がより面白い方向へ向かったのは事実。
そこには過疎化が進み。昔と比べて少なくなったとは言え、しっかりとした人間の生活の営みが映し出されていた。

2018年5月1日 シアターイメージフォーラム/シアター1