藻尾井逞育

ジョニーは行方不明/台北暮色の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

4.0
「距離が近すぎると人は衝突する」
「人との距離が近すぎると愛し方も忘れる」

台北で一人暮らしをするシューは、ジョニー宛ての間違い電話を何度も受けていた。中年男性のフォンは、車の中で生活している。そして少年リーは、なかなか独り立ちできずうまく生きられずにいた。そんな3人が孤独の中、出逢い、また、新しい未来が見えてきたとき、それぞれが抱えている問題が明かされていく ──。

反射するオレンジ光──暮色の中(台北)で、人はそれぞれ悲しい過去やトラウマ、家族の問題などを抱えながら、それでも誰かと繋がっていようとして、いまを生きている。それは孤独であるかもしれませんが、誰かとの繋がりを求め続けていさえすれば決して独りぼっちなんかじゃない。「ジョニーはそこにいますか?」とシューに何度もかかってくる間違い電話は、滑稽にも思えますが、なんとか彼といつまでも繋がっていたいという祈りにも似た願いなんですね。都会で過ごす毎日は日々慌ただしく、その忙しさに身をまかせていると誰かとの繋がりも自分自身さえも見失いそうです。でもたまには、ちょうど故障した車を降りて後続車に道を譲りながらゆっくりと手で押していくように、ゆっくりと一日を過ごすのもいいかもしれません。立ち止まることで、今まで車内からは見えなかったモノレールのゆったりとした動きが見えたり、夕映えの屋上で心地よい風を感じることもできます。そしてゆったりとした気持ちの中、誰かにちょっとだけ優しくなれそうな気もしてきます。

2024/04/03
台湾加油!