しのごの

桜桃の味のしのごののレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
3.0
鑑賞しているだけで鼻の穴が真っ黒になり喉がカラカラになったような気がする。
そのくらい砂埃が印象的だった。
監督は その砂埃を意識した訳ではなくて、その土地の環境ありのままをフィルムに残しただけなのだろうけど。

時間の経過が よく分からない太陽の光のせいで、まるで夢を見ているような気分に陥った。
照り方や陰り方が虚ろで曖昧で、昼なのか夕方なのか、はたまた明け方なのか…。


生きる意味なんて、考えるほど苦しくなるに決まってる。
私も しょっちゅう、日々の虚無感に襲われて やるせ無さのあまり絶望的になり、遂には この世から跡形もなく消えてしまえたら… なんて妄想したりしちゃうんだけど、そういう時こそ敢えて外出して誰かに会うこと、孤独から抜け出すことが大切だと思う。

作中では、終始 主人公のバディが ”翌朝、自殺した自分の上に土を盛ってくれる人” を探しているわけだけれども、その行為って実は、彼の根底にある生に対する執着から出たもので、彼は本当は生きたかったんじゃないかな。
誰かに話を聞いてもらいたかったし、誰かに引き留めてほしかったんじゃないかな。

本当は生きたい、死にたくない、という自分の本当の気持ちに気付いちゃった時って、びっくりするし がっかりしたりもするんだけど、きっと そこが新たな人生の出発点になるんだと思う。
少なくとも私は そうだったから。

バディも私も、もう少し楽観的に能天気に生きられたら良いのにね。

自分が何のために生まれたかだなんて、六花亭のマルセイバターサンド(大好物)を食べるためとか、日向ぼっこするためとか、猫を愛でるためとか、そんなもんで充分なんだよね。
それで満足できるか否かは自分の考え方次第。
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