このレビューはネタバレを含みます
クルド人、アフガニスタン人、トルコ人。主人公の死を望まなかったそれぞれが桜桃のメタファーである。主人公は、死のうとしなければその実に手が届くこともなかった。自殺は罪だが、自殺の欲求もまた学びの端緒。死にたいと思わせるところまでが神の導き。クルド人の少年が一番印象深いかな。たとえ元軍人の先輩だろうと、嫌なことからは逃げていい。逃げることで救ってる。もしも満月の話を聴かなかったら、目を閉じてしまったかもしれない。世界を美しく保つだけで誰かの命を救っている。自然の美しさは、魂に借景として映る。ホテルの外から見送った木の実たちは、きっと彼におかえりを言うことになる。