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アランフエスの麗しき日々の教授のレビュー・感想・評価

アランフエスの麗しき日々(2016年製作の映画)
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最新作「世界の涯ての鼓動」が素晴らし過ぎて、ヴィム・ヴェンダース作品をひとつずつ観ていこうと思う。

というわけで。本作はとにかく「なんてことない画面」だけども「これどうやって撮ったの?」というありきたりなようで、なかなか若造には撮れない風景。

作劇はまさに、孤独な作家の、頭の中と小説の中の話が混在して、しかもモノローグによって「物語る」というシンプル且つ、大仰な実験に満ちた映画。

とにかく主人公の男と女、が「性」にまつわる「生の営み」についてを「物語る」というもの。詩的でわかりにくい会話ながら、イメージを文字通り、話し言葉で語られると、自ずとその風景などは想像してしまうわけで。
つまり語られる風景こそが、詩のように頭の中のイメージとして繰り広げられていく。
目の前で観ている「映画」の物語が、語る物語をまた脳内でひとつ組み立てていくそのつくりや、テンポの秀逸さ。
これが、映画の映画たる、ところ。

重ねられるオーバーラップに彷彿とするのは男と女は、この作家の父や母の面影ではないのか?ということ。

父と母の物語、にまつわる性と生。
そして自分自身の性と生の。
とにかく書くしかなく描くしかなく。
つまりそれが人間を知るということだったり、あるいは暴くということなのかもしれない。

限りなくシンプルでありながら、えもいわれぬゴージャスさと、むしろエンタメ的ですらある作劇に、「つまんないですけど、感動してしまう」という謎に感情に浸れる。

要は猥談でしかないのであるが、しかしそれが人間の限りない欲望と尊厳なのだ、ということを「語る」ことで映画にしてしまった、という感じ。
且つ、「ベルリン 天使の詩」でも言及された「語り部」についての物語の最新版。
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