ジェルボール

メリー・ゴー・ラウンドのジェルボールのレビュー・感想・評価

メリー・ゴー・ラウンド(1981年製作の映画)
4.5
美しき諍い女やセリーヌとジュリーに思い入れのようなものがあったものの、ノロワ、デュエルと立て続けにつまずいたので、半ば諦め気味に最低ラインの期待で臨んだが、率直に言ってかなりよかった。先般の2作と傾向ががらっと変わる訳ではないので、これといった理由が挙げにくいのだが。

ただ強いていうなら、まずこう言ってはあれだが、マリアシュナイダーのデニムオンデニムが最高である。リュプシャンスキーの撮影自体が素晴らしいのは承知しているものの、ノロワとデュエルはそれすら上の空だったので、案外そんなことが大きい。同じく褪せたブルーでまとめたジョーダレッサンドロとのコンビのルックで、全編安心感があったこともあり、ほかの群像劇に感じた退屈さはなく、光景のリズムやコントラストに没入できた。

ダレッサンドロが木々の合間を縫って走り回るシーン、白馬に乗った騎士との一進一退、テーブル両端から燭台越しに語り合うディナーシーンなんかがよかった。なんやかんや室内劇的な要素が少なかったことが、他の作と評価を分つ理由かもしれない。

音楽は、本作では役柄と別撮りのコントラバスとバスクラでの演奏で、しばらくはフリー調で、当時のこの手の左寄りなアプローチかとこれも心を閉ざしかけたが、たしか二曲目、ドローン上で舞い上がるようなプレイスタイルにもってかれた。

それでも160分は長く、自分の尻の耐性もあって、もう少し圧縮できるでしょうと終盤はうらめしい気持ちにもなった。だがそれより本作は、リヴェットのいいところを再確認できた嬉しさのほうが勝る。