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ゆれる人魚のncccoのレビュー・感想・評価

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
4.5
大好き大好き、何度観てるかもはやわからないくらい観てる。
人魚の姉妹シルバーとゴールデンが陸に上がり、ナイトクラブでシンガーとして働くというお話。背徳耽美、ダークで湿っぽくて秘めやかな感じと、お伽話から抜け出したままの純粋さと。そこに現代らしさもプラスしたサイケでキッチュな世界観。しかもまさかのミュージカル仕立てという!もーこーゆーのすっごい好み!!

これを観てひしひしと染みるように感じたのは、いきものが生きて行く上での肉肉しさというか、色んな生を踏み台にして生きながらえる、どんなに理性を手にして倫理をかざしたところで結局利己的でしかない生き物という存在について。
似通っていても全然違ういきものである人間と人魚は最終的には自らの生を生かすために相手を異なる生物として扱い、傷つけ合ってしまう。

どんなに想い合ってみても超えられない壁。それでも恋という頼りないものに揺れ、彼と一緒にいたいと思う女心。じゃあ、そこからどうするか。
ここを徹底的にお伽話のままファンタジーでふわっとしたのが「シェイプオブウォーター」で、リアリティを持たせてるのが「ゆれる人魚」だな、と勝手に思っている。

ミュテクに愛されんとして足(というか下半身)を手に入れるシルバーの行為は、純粋とかじゃなくて滑稽だし、痛々しくて目を背けたくなるけれど、それをどこかで肯定してしまう自分もいる。女としての愚かさ。けど、それすらも吹き飛ばすラストのシルバーの表情に、全部持っていかれる。音楽も最高。
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