ルイス・キャロルによる『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』に「ジャバウォッキー」という怪物が登場する。
シュヴァンクマイエルの『ジャバウォッキー』の製作は、『鏡の国のアリス』で記述された「ジャバウォックの詩」をきっかけとし、その詩は映画冒頭でも朗読されている。
つまり、タイトル通り『鏡の国のアリス』のジャバウォッキーがモチーフで、シャビーでヴィクトリアンな世界感が素敵な作品(ドールや虫が苦手な人は注意)。
無垢で可愛らしいお人形さんたちによくもまぁこんな動作をつけるもんだと感心しきり。
丹誠込めて作り上げた世界を自ら破壊する芸術家気質がシュールな映像に溢れ出ている。
特に意味など考えなくても、次々に出てくる奇天烈なイメージ群をただ楽しめばいい。
これを観てたら、子供の頃、雑誌の付録についていた紙の着せ替え人形で遊んだことを思い出した。
音とか色とか動きとか予想される手触りとかに少しずつ違和感があって、夢の中みたいだった。
私はいつも夢の中で全力で走ることに失敗しているので、ぴろぴろ走る人形やおじさんが羨ましい。
この作品は、シュールでブラックで意味があるのかどうかもわからないけど、なんか凄い。
そして可愛い。
ヤン・シュヴァンクマイエルの作品を観ていると、小さな穴を覗かされて、入るはずない全身がいつの間にか吸い込まれて全然底が見えない暗い穴の中をゆっくり落ちていく、みたいなよく分からない不安に駆られるので、長編ではなく短編くらいが私には丁度良い。
ハテナが多くなるのはシュヴァンクマイエルだからしゃーない。