みむさん

雪が降る前にのみむさんのレビュー・感想・評価

雪が降る前に(2013年製作の映画)
4.0
ヨーテボリ映画祭の過去作セレクションで。

イラクで見合い結婚から逃れ駆け落ちしてヨーロッパに渡った姉ネルミンを、名誉殺人のため弟シヤルが追う。
16歳の少年が残酷な目的のために過酷な旅に出る。厳格すぎるコミュニティと家父長制、ヨーロッパの移民事情、宗教が絡まるロードムービー。

いきなりラップぐるぐる巻きの少年の姿にビックリするが、密航業者による違法な国境通過のためだろう。

シヤルは父の死後、一家の主となり母娘を守る義務があるが、姉の駆け落ちで周囲の見る目はプレッシャーとなり、シアルが姉を家族の名誉のために殺さなければという行動に向かわせる。

途中で訳あり少女と出会いつかのまの微笑ましいシーンはあるが、シヤルの旅の目的がそもそも殺人だし、姉の居場所にたどり着くまでは何ヵ国も国境を越えなければならず、事件やトラブルの臭いは常にある。

逃げる姉、追う弟の話ではあるが、弟のシヤル側から描かれるので姉がどこで何をしているのかは、シヤル同様見ている側も手探り。

厳格な教えがあるとはいえ、姉を殺すことができるのか。
一人の人間、一人の少年としての部分と、厳格なクルド人コミュニティの一員て家長になったプレッシャー、どちらが勝つのだろうと思いながら見ていたが、シヤル少年がわりと肝が座ってるのはちょっと驚いた。殺す気満々じゃないか。道中で家族や習慣に囚われない大切なものを知り少年の人間らしさは垣間見えたけども。目的を果たさないと家に戻ったら地獄なんだろうな。
そういう意味では名誉殺人の当事者になってしまった(ここでは姉と弟)どちら側も人生狂わされるし、大きな影を落とす。

救いと絶望が同時に押し寄せる終盤、なんとも言えない陰鬱な気持ちになるなぁ。心が痛い。

それでもクルド人家族やコミュニティは伝統を守っていく。


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