butasu

レザボア・ドッグスのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ほとんど全編にわたって黒スーツの男たちが会話しているだけの低予算映画。なのにどうしてこんなに映画として面白いのだろう。あっという間の100分間だった。この後続々とフォロワーが出てきたが、やはりタランティーノは唯一無二の天才だ。これが初監督作なんて、本当にどうかしている。

主要人数が多めにも関わらず、人物の描き分けが完璧で、混乱することは全く無い。必要な情報は全て説明的でなく示されているし、何より圧倒的なキャラクター性がある。

「強盗が失敗した」シーンから始めて、現在の「誰が裏切り者か」シーンに「計画段階」シーンを混ぜていく。この時系列のシャッフルが、効果的以外の何物でもない上手さ。あえて事件現場のシーンを一切入れないのも、こちらの想像力を膨らませてより各人物への思い入れを際立たせる。現在進行形のシーンがほぼ倉庫での会話のみというのも凄い。低予算ゆえに「喪服なら皆持ってるだろう」と衣装を私服にしたのに、黒ジーンズで誤魔化してる奴がいるの好き。

観終わってから冒頭の「ライク・ア・ヴァージン」を巡るダラダラ会話を改めて観ると、全員の立ち位置と関係性が既にこの時点でさり気なく示されていることがわかる。ものすごく巧みな構成なのにちっともわざとらしくない。「お互いの素性を一切話さないルール」が潜入捜査にうってつけであるなど、細かい設定も抜かりなく気が利いている。

中盤に"耳を削ぎ落とす"をいうバイオレンス描写をちゃんと挟んで飽きさせないし(しかしその瞬間は直接見せない上手さと、途中で一度倉庫の外に出ることでBGMが小さくなる緊張と緩和の上手さ)、クライマックスの撃ち合いは圧巻。たったの2秒で事態は"ほぼ全員瀕死"という最悪の展開を迎えるし、そうまでして守った男であるオレンジ(ティム・ロス)が裏切り者だったと知ったラストシーンのホワイト(ハーヴェイ・カイテル)の表情が何とも言えない。

黙ったままでいることも出来たのに身を賭して自分を守ってくれたホワイトに筋を通したくて「俺は警官だ」と一言告げるオレンジもたまらない。(タランティーノのインタビューによれば"JINGI(仁義)"らしい。最高か。)そこに至るまでに「それほど頭が良くは無いオタク気質の青年だが努力家で、市民を撃ってしまったことへの罪悪感に苛まれている」というオレンジの人物像と、OP後に示される二人の関係性をしっかりと描けているからこその説得力。そしてホワイトがオレンジを撃ち警官たちに撃たれるシーンも直接見せず、そのままエンディングにストンと入る潔さと余韻の残し方。最高だった。
butasu

butasu