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小さき麦の花のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

小さき麦の花(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

美しく哀しい話だった。主演二人の存在感と演技が素晴らしい。

夫のヨウティエは内気で無口な性格で親戚から疎まれ村の皆からは馬鹿にされているという設定だが、その割に農業の能力がありすぎるとは思った。麦やじゃがいもを育て、ロバや鶏を育て、レンガを作るところから始めて自分たちの家まで建ててしまう。ハイスペックにも程がある。

周囲から馬鹿にされ孤立していた二人がゆっくりとさり気なく愛情を育んでいく過程が繊細に描かれており、どうか幸せになってくれと思いながら観ていた。すると途中で「これができたら町に行って病院で診てもらおう」というわかりやすすぎる死亡フラグが立ち、終わった、と思った途端に呆気なく妻が事故で死んでしまった。これは本当に悲しかった。(ただ横たわる妻の死体を夫が見つめるシーンで、妻の身体がどうみても呼吸でゆっくり上下に動いているのはちょっと没入感を削いだ。)

身の回りの物を全て売却し、約束をした物品は全て返し、夫は消えていく。一切夫が映らない、ロバが見切れるだけという何とも言えない余韻を残す終わり方は、嫌いではないがやや消化不良の感も否めない(検閲の問題があったらしいが)。

とても良い映画だとは思うのだが、さすがにこの内容で130分は長すぎる。途中で「もうだいぶ終盤かな」と一時停止をしたところまだ1時間しか経っていなかったので驚いた。全ての農作業を丁寧に映していく描写に味があるのも確かだし、だからこそ夫婦に感情移入しやすくなっていくのだが、もうちょっとコンパクトにまとまっていればより良かったと思う。
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