荒澤龍

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~の荒澤龍のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

<物語>
・バンドで各地を回りながら生活する青年
 がある日突然耳が聞こえなくなり、暮ら
 しが一変してしまう物語。
・音楽、メンバーである彼女をどうする
 か、ろう者として生きるか手術をして聴
 力を回復するかなど様々な岐路に立たさ
 れながらそれでも人生を歩んでいく。
・耳が聞こえなくなるまでの展開やろう者
 のグループに馴染むまでの展開が早く、
 前振りが弱いと感じた。
・生きがい仕事、生活全てを失うほどのイ
 ンパクトはどれほどのものか筆舌に窮す
 る。
・運命や巡り合わせのちょっとしたタイミ
 ングで人生は大きく変わってしまう。耳
 が聞こえなくなったのは恐らく身体的、
 精神的ストレスによるもので、自由な生
 活をしているようで、実は大きな負担が
 かかっていた。それはルービンだけでな  
 く、彼女の「引っ掻き癖」にも現れてい 
 た。
・難聴になったことを契機に彼女はルービ
 ンと離れ父親とともに音楽家として別の
 道に進み始める。その活動が軌道に乗っ
 ている時にルービンが手術を終え姿を現
 す。ルービンと離れたことにより、幸か
 不幸か彼女はライフスタイルを見つめ直
 したのだろう。ルービンとの日々は確か
 に幸福であったが、このままで良いのか
 という気持ちが芽生えたのかもしれな
 い。
・手術の結果得た聴力はルービンが思い描
 いていたものとは質の面で大きく異なっ
 ていた。音楽家でなければそれに慣れた
 のかもしれないが、音にこだわりを持
 ち、彼女の音楽を理解できないという状
 況はかなり辛いものだと思う。
・最後のシーンで補聴器を外したのは絶望
 して現実と向き合った瞬間で、それから
 前に進むのか後退するのかは含みを持た
 せて視聴者に委ねられている。
・自分としては絶望ののち、ろう者グルー
 プのような適応能力を発揮し、別の道で
 何らかの大きな活躍をする、というビジ
 ョンを希望も込めて描きたい。
・彼女との別れのシーンでは彼女から明確
 な別れの言葉はないが涙や雰囲気や言葉
 の端々から感じるものからルービン自身
 が不安に感じていたことが繋がってしま
 ったような感じで感涙した。

<人物>
・冒頭のドラムを演奏するシーンだけで音
 楽好きなのが伝わる。
・まっすぐな人柄に惹かれ、俳優との相性
 が素晴らしいと感じた。ごちゃごちゃ弁
 解する気はない。という言葉が刺さっ
 た。
・ルービンの生い立ちが不明だが、根底に
 精神面の脆弱さを感じる。弱さゆえにパ
 ンクや入れ墨、ドラッグなどで鎧を纏っ
 ている。ただ彼女への関わり方や一度距
 離を置く時などの執着から弱さが垣間見 
 えるのがリアルで人間らしくて良い。

<演出>
・ドラムを叩くシーンはどうやって撮影し
 ているのか?本当にドラムを叩いている
 ようにしか見えない。
・耳が聞こえなくなる感覚をリアルに体感 
 できる。
荒澤龍

荒澤龍