アキラナウェイ

ぼくと魔法の言葉たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ぼくと魔法の言葉たち(2016年製作の映画)
4.3
3歳になる頃、オーウェンが「消えた」。
オーウェンは「誘拐された」。

オーウェンを突如襲った自閉症の発症。
運動能力の低下、失われた言葉。

両親は子どもが消えた、誘拐されたと語る。
それから4年もの間、息子との会話は失われた。
「もう、二度と話せなくなるかもしれない」。
医師の言葉は両親を失意のどん底に叩き落としただろう。4年がどれ程長かっただろう。

ディズニー映画が大好きなオーウェン。

彼が突然発した言葉。

Just your voice!
(声をよこせ!)

声を失くした少年が発した言葉がこれとは。
もう、泣いてしまう。

両親はオーウェンがディズニー映画の台詞を発した事に気付く。彼はディズニー映画を通して現実を理解しようとしている!もう一度、息子は話せる様になるかも知れない!

ディズニー映画の台詞をベースに交わされ始める会話。止まっていた家族の時間が進み始める。

ピーターパンの様にいつまでも子どもでいたかった少年は、ヘラクレスから勇気をもらい、いじめられた時はノートルダムの鐘のカジモドと悲しみを分け合い、両親の元を離れて一人暮らしを始める時は母を亡くしたバンビと自分を重ね、ガールフレンドとアラジンを観てキスをする。

彼の人生の全てはディズニー映画とリンクする。

年老いていく両親
いずれ弟の世話を一人で担うであろう兄

不安はまだまだ霧の様に立ち込めていても、彼らは絶望したりはしない。

自閉症の少年が23歳になり、自立していく過程をディズニー映画の名シーンと共に描き出す珠玉のドキュメンタリー。

屈託なく笑い、ディズニーキャラクターの物真似が完璧な愛すべきオーウェンに、観ている僕らも勇気を与えられる。