ササキ・タカシ

哭声 コクソンのササキ・タカシのレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
4.0
韓国の住宅地で起きた連続殺人事件を題材にした『チェイサー』という映画を監督した人の新作と言うこともあり、今回は山間の田舎町で起きる猟奇殺人事件の話かなんかなのかなって思って見てみたら、実際はバッキバキにハードコアなオカルトホラー映画だったことにびっくり。『殺人の追憶』かと思っていたら『エクソシスト』だった、みたいな流れなわけですが、怖がっていいんだか笑っていいんだかわからないような不条理な展開&カオティックな人物描写は黒沢清監督のホラー作品や白石晃士監督作品(『カルト』、『コワすぎ!』、『貞子 VS 伽椰子』)を思わせます。でも日本でやったら(それこそ『コワすぎ!』みたいな)B級なノリになってしまいそうなところを、美麗な風景と韓国独自の陰鬱な緊張感でグイグイ観客の意識を釘付けにする2時間半。映画を見たー、って感じ。まあ何せ、日本から出向して事件の中心となる謎の人物を演じた國村隼の顔力(と良い声)が素晴らしく、同じ日本人として意味もなく誇らしげな気分になれます。俺も國村隼みたいな人間離れした存在感がほしいよ。

あからさまに観客を混乱させる、というか、解釈を観客に委ねるような作りになっているため鑑賞後のモヤモヤは相当なものでして、え、えー? 聖書とか勉強すれば答えが掴めるのかな…? 鶏が3回鳴いたら云々のところとか解釈を委ね過ぎにも程がなくね? これがそれなりにヒットする韓国ってすげえな、確かにリピートしたくなるような映画ではあるけども…

韓流ブームが去って以降、日本では韓国映画の上映本数が極端に減り、こういったヒット作でも日本で公開するかしないかみたいな微妙な状況が続いておりますが、韓国国内の映画産業は現在も旺盛らしく、羨ましい限りです。パク・チャヌクの『お嬢さん』も本作『コクソン』も面白いんだか面白くないんだかわかんないくらい凄まじい内容の傑作でしたけど、一足遅く公開されるらしいキム・ジウンの『密偵』は大丈夫なのでしょうか、二作に並ぶインパクトはあるのでしょうか…
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