ナチに家族を奪われた男の復讐の旅
アウシュビッツ強制収容所は1940~1945年の間に存在した場所で、当時収容所の所員だった人は2015年現在では90歳を超えており、関わったドイツ人や迫害を免れたユダヤ人は殆どがもう存在していない。
主人公のゼヴは90歳で痴呆を患っておりケアハウスで過ごしていた。ある日友人のマックスに同じ強制収容所で家族を殺された者同士として、自分の代わりに復讐を成し遂げて欲しいと懇願される。詳細を記した1通の手紙を頼りに、ゼヴは復讐の道行に向かう。
ホロコーストは70年前の惨事でありますが、その恨み・憎しみ・無念は生涯忘れないのでしょう。
原題の「Remember」はホロコーストへの思いと痴呆症で手紙で使命を思い出すという2つの意味があるようです。
ゼヴは記憶が危ういのですが、旅先の人の親切に助けてもらいながら目的に向かって旅をします。
列車内で子供とするウィットに富んだ会話が印象的です。
マックスの手紙の指示通りに訪ねて行きますが、どれも的外れに終わっていきます。
後半の展開、特にラストは自分としては意外性が高くて、唸らされるものでした。
結末の予測がついた人も少なくないようですが、この作品のテーマは人間の執念と、復讐という行為の虚しさにあると思います。
一番怖いのは90歳の老人に平気で銃を売ってしまう事。日本でいう自動車運転に匹敵する危うさですね。