冷蔵庫とプリンター

雲の中の散歩の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

雲の中の散歩(1942年製作の映画)
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 ネオレアリズモ以前のイタリア映画の傑作。
 口うるさい妻と小さい子供、失業中の兄と暮らすパウロは仕事のために列車で遠方へと向かう。混雑した列車でなんとか席を確保したが、たまたま出会った薄幸の若い女性マリアを気の毒に思い席を譲る。駅員と揉めてバスに乗り換えたパウロはまたしてもマリアと乗り合わせる。マリアは妊娠しており、家族にそれを報告しに行くつもりだが勘当されるだろうことを知ったパウロはマリアの夫だと自らを偽りマリアの家族と会うことを決意するが…
 都会で暮らす小市民のひとときの冒険を描いているが、ラストで日常へ回帰した男が眩暈を起こすというところがやはり面白い。雲の上の散歩から地上へ着地するところまでを描いているわけだが、1942年ムッソリーニ政権下で制作された本作、この眩暈を覚えることの含意がすごい。