カトゥ

海賊とよばれた男のカトゥのレビュー・感想・評価

海賊とよばれた男(2016年製作の映画)
2.0
あの有名な利権争い、出光興産の中東進出を題材にした映画。「日本を元気にする」という意気込みは伝わってくるけれど、大作というよりも大ざっぱに過ぎる作品というか、あえて阿呆になって楽しむ系の作品に仕上がっているのは(そもそもそういう原作であるとはいえ)残念な限り。まるでマーベル映画だ。

気合いと純粋さで道理もパワーゲームも押し通す、というのは観ていて確かに快感ではある。でも、どうにも嘘っぽさを感じてしまう。大昔のヤクザ映画じゃないんだから、あんな切迫した時代と状況で、叫んで怒鳴って無茶をして、というのは逆に感動を削ぐ。
興醒めといえば、復員兵や船の乗組員達が、顔は煤と脂と汗で汚れている、いつもの日本映画風メイクで、でも服は妙に綺麗(汚し、は入っているが服そのものは破れてもほつれてもいない)だったりと、細部も気になる。そのほうが見苦しくない、という配慮なのかもしれないけれど、あまり“どん底”な感じがしない。
 
 
総じて言えば、「こんな日本人がいたなんて!知らなかった!感動した!」と楽しむための娯楽映画としては、きちんと完成しているとは思う。
ただし深みは皆無で、せっかくの題材を勧善懲悪ものに堕してしまっている感は否めない。
昔だったら、こういう大雑把なフィクションは映像もまた雑だったのだが、さすがにCGはきちんとしている。
 
 

単純な“物語”を求める人におすすめ。
僕は楽しめなかった。前述の通り、この時代の海外進出と利権争いは沢山の本が出ている。そういうものを読んでいると、逆に楽しめなくなってしまう、そんな気がする。
あえて辛辣な言い方をすると「弱いフィクション」なのだ、残念ながら。
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