うえびん

バジュランギおじさんと、小さな迷子のうえびんのレビュー・感想・評価

4.6
歌って踊って、旅するインド映画

列車やバスに揺られ、街を抜け、野を渡り、山を越え、谷を越え、二人でひたすらにある場所を探し歩く、走る。

パジュランギおじさんは、一本気で優しい力持ち。ひたすらカッコいい。
迷子のムンニー(シャーヒダー)は、声が出ない。一生懸命、表情や仕草で伝えようとする姿が、ひたすら愛らしい。

カラフルな映像、壮大な自然風景、エスニックな音楽が2時間半の長さを感じさせない。

インドとパキスタンの国の違い、ヒンドゥー教とイスラム教の宗教の違い。違うことで大人たちはもめるけど、子ども同士は意に介さない。もめてる大人同士の頑なな心を和まし、ほぐしてゆく。

ベースは娯楽作品なんだけど、民族や宗教の対立も描かれていて、それには一切政治色が感じられないのがよかった。インドとパキスタン、それぞれの土地に暮らす人たちが守ってきた習慣や伝統が、さりげなく描かれている。

登場人物も正義と悪の二元論で描かれていなく、ほどよいデフォルメ感がいい。バカ正直なパジュランギは信仰に、彼を追い詰める人々も自分の職務に忠実だと見れば、誰もが善良な市民の一人だと思える。

子はかすがい。

パジュランギとムンニーとの間に生まれた“絆”(作中では“愛”と表現されてるけどしっくりこない)が、民族と宗教の違う両者をつなぐ姿を見て思った。古今東西、子どもは父母や祖父母や地域や社会の人々をつなぐ“かすがい”なんだなぁと。

クスッとしたり、ソワソワしたり、ホロリとしたり、ハラハラしたり、ホッとしたり、スカッとしたり、ドキッとしたり、ジーンとしたり、ハマヌーン様やアッラーに祈ってみたり…、心中いろいろと躍動しながら、最後はいい余韻を残してくれる作品でした。
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