アンジェリカも美しいのだが、本作最大の見所はドウロ河沿いの「街」そのものが魅力的であること。しかも死の世界に誘う妖気を放っている。雨が降る夜の街から始まり、頻繁に河と街と丘のロングショットが挿入される。
農夫達が畑を耕すシーンも凄い。農夫達が「斜面」を降りてくる縦の運動と、規則的な動きで畑を耕す横の運動。シュールな場面だが、イザクは自分の部屋から見える農夫達に興味を持ち彼らの写真を撮ろうとする。アンジェリカの魅力と同様に、この農夫達のシーンも重要。
農夫たちが畑を耕す時の「鍬」の音も素晴らしい。農夫が歌う時この鍬の音が伴奏のようになり、すごいパーカッシブでグルーヴィーに聞こえてくるから不思議だ。鍬で畑を耕す音がこんなに心地よいなんて!音の演出!
イザクの部屋の開きっぱなしのベランダの扉もまた本作の魅力の一つ。ここから畑が見え、アンジェリカの幽霊もこのベランダに現れる。最後にベランダの扉が閉められるのも意味深で興味深い。
本作は扉の開閉、部屋の出入りが大変多い映画で、イザクの部屋に唐突に入ってくる下宿屋の女主人や、イザクのポルタシュ家への訪問はドアをノックして小間使いがドアを開けるのだが、この行為がとても魅力的に撮られてる。 外からドア越しに屋敷の中が見え、ショットを切り返して今度は室内からドア越しに外が見えるが、このショットで映るテーブル上の金魚鉢が素晴らしい。
結局、ユーロスペースのオリヴェイラ特集には行けなかったなぁ・・・・。それが悲しい。