月うさぎ

ベイビー・ドライバーの月うさぎのレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
3.9
アンセル・エルゴートの「ジョナサン」を観た時に友人から教えてもらって以来、絶対観たい!と思っていた映画。
やっと観られた〜!
のっけから、アクセル全開!
赤のスバル・インプレッサWRXがかっ飛びます。
カーチェイスもスリリングですが、ドライビングテクニックの見せ方がステキ。
カー・アクションとミュージックがカッコいい、と聞いていたけど、これか!!
…でも、想像してたのと色々違う…

ベイビーと呼ばれるゲッタウェイ・ドライバーは、聴覚に難があり、外出時はいつもイヤフォンで音楽を聴いています。ノリノリの曲を選曲することで超絶ドライビングを可能にするという特技を持っています。
主人公ベイビーは、訳あって強盗団の一員になっていますが、本意ではなく、荒仕事には関わらず、極力人を傷つけまいとする優しさと、脅しに動じないクールさを持っています。無口なポーカーフェイス。長身だけれど童顔。
そういうキャラです。

イントロのカーアクションのシーンですが
「ベルボトムズ」(ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン)の曲、丸々一曲分を使い切って、派手な振り付けと口パクの顔芸から入るんです。ちょっと度肝を抜かれます。カットワークの多彩さも芸術的で、とてもとても印象的。元の音楽のイメージとは異なる方向ですが、今後この曲はベイビー・ドライバーのイントロシーンと切っても切れなくなるでしょう。完璧に決まってます。
対照的にこれに続くワンカットのコーヒーお買い物シーンも歌詞や楽器の演奏と美しくフュージョンしており、ミュージックビデオとして完璧。

正直ここまでで映画の最大の見所は終わったかな。と思います。

ストーリーはこの後ボーイミーツガールの映画になっていきます。リリー・ジェイムズは可愛いし。それはそれでいいのですが。
ダイナーのウェイトレスがこんなにチャーミングに接客するか?みたいな。
映像表現や俳優さんたちの演技を楽しんで
物語のリアリティや整合性を考えない方がいいと思います。

ベイビーが自宅で過ごすシーンもステキ
育ての親のジョーは耳と脚が不自由
手話と読唇術でコミュニケーションをとっています。
ベイビーの身のこなしが、それはそれは美しいのです。
アンセル・エルゴートが「ウエストサイド・ストーリー」のトミー役に抜擢という話に不思議な気持ちがしていましたが(だってポーカーフェイスが似合う人よ)でも、踊れるんだね。と、納得。
彼は子供の頃バレエを習っていたそうです。
またも納得。

映画全体がミュージック・ビデオ
映画の効果として音楽が寄り添うのではなく、音楽とシンクロする様に映像が作られています。

コインランドリーのシーンも良かった。全くリアルではないですが、色彩が美しい。カメラワークも夢のよう。曲はT-REXのデボラ。(代表曲でもなんでもない)
そう。音楽映画ではあるのですが、その選曲がマイナーなんですよ!
監督の趣味らしい。
テキーラはいいとして、ハーレム・シャッフルも流行ったストーンズバージョンではないし、QUEENの曲もブライトン・ロックですかい?!しかも全く効果的には使われてない(音が小さいよっ)
他、ほぼ知らない曲が多かったです。
つまり音楽を聴いてテンションが上がるという仕掛けではないのです。
それは音楽映画、ではないですよね。
ちなみに映画内ではベイビーの一番好きな曲がブライトン・ロックとされていますが、アンセル・エルゴートのリクエスト曲はコモドアーズのEASYだったそうです。

多くの映画にオマージュが捧げられているらしいです。
「ザ・ドライバー」「ブルース・ブラザーズ」はもちろんのこと。隠しネタもいっぱいありそうですねー。

エドガー・ライト監督インタビューより
「台本ではトヨタのカローラって書いていたんだけど、スタントチームからスバルを薦められてね。見た目はセダンタイプだけど、全輪駆動だからまるでラリー車と同じ動きができるんだ。スバルのファンに、とっても好評だよ」
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