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ビリー・リンの永遠の一日ののんchanのレビュー・感想・評価

ビリー・リンの永遠の一日(2016年製作の映画)
4.0
アン・リー監督がイラク戦争を題材にしたベン・ファウンテンの小説を映画化。
若い兵士のPTSDと心の葛藤を描いた秀作。


FOXニュースのカメラに偶然映り込んだ戦地での若い兵士の救出行動が、本国メディアで話題となり、イラク戦争の英雄として2週間の休暇をもらったビリー・リン(ジョー・アルウィン)は、仲間たちと共に一時帰国する。
建前は戦意高揚のための休暇となっているが、実際はスーパーボウルのハーフタイムショーにゲスト出演したり、映画化の話が持ち込まれる。実状は軍部の宣伝活動に利用されているだけなのだった。

家族は英雄となって帰宅するビリーを迎えるが複雑な思いがある。事故により顔、身体に傷痕のある姉(クリステン・スチュワート)が、心から弟を心配し命が何より大切だと訴える。
ビリーはその気持ちも痛い程解るが、戦地で助けられずに亡くなった尊敬する軍曹(ヴィン・ディーゼル)のためにも仇を討ちたい。


『アメリカン・スナイパー』や『父親たちの星条旗』等、優秀な帰還兵やPTSDの作品は多数あるが、この作品は19歳の普通の若者の話。田舎の出身、お金も学歴もなく、バーガーキングで働くしかすべがない、貧困を背負って一生を過ごすのが目に見える現実。それなら戦争にでも行くか?くらいの気持ちで兵士になった一青年。そんな若者たちは沢山いるのだろう。

アメリカを象徴する大イベント、スーパーボウルでのゲストはその時点で最高に輝いているビヨンセ(そっくりさん)だ。それを観に来ている人々はただただお祭り気分なのだ。自分たちも並ばせられ拍手をもらったとて、心から英雄視している者などいない。
そこで出会ったチアガールと瞬時に恋をするが、将来を誓い合うには時間が足りない。

ビリーがその一日、過去のトラウマとこれからの自分を天秤に掛けて過ごした結果、出す答えは。


アメリカの明暗の実際を描いていて、さすが名監督だけあると感心することだらけだった。
撮影は軍用カメラで全編を撮影しているのだそう。

ドンパチも少しだけあるが、それがメインではない。
ある意味、青春ドラマだし、戦争とは何なのか?愛国心って何なのか?アメリカ合衆国の現実を一緒に経験するような貴重な作品だった。



※aaaakikoさん、ありがとう⭐️
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