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オーバー・フェンスのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
4.2
家庭をかえりみなかった男・白岩(オダギリジョー)は、妻に見限られ、東京から故郷の函館に戻りつつも実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。訓練校とアパートの往復、缶ビールとコンビニ弁当の惰性の日々。
ある日、同じ職業訓練校に通う仲間(松田翔太)とキャバクラに連れて行かれ、そこで鳥の動きを真似る風変りな若いホステスと出会う―。
名前は聡(蒼井優)。どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていく…。孤高の作家・佐藤泰志の同名小説を映画化。
仕事に邁進するあまり奥さんが育児ノイローゼになってしまったことに苦しみ残りの人生はただ働いて死ぬだけと諦めて生きている白岩と愛を求め自分が愛されないと思うあまり自己臭恐怖と双極性障害を患う聡が、互いを傷つけ合うように求め合い、互いの過去と向き合い、職業訓練校の仲間との交流の中で希望を見出だしていく展開が、時にユーモラスに切なく描かれていて、函館三部作の「そこのみにて光輝く」の地を這うように生きている人間の切実さとは違うユルさと明るさが癒される傑作ヒューマンドラマ映画です。
オダギリジョーのくたびれた枯れた魅力や蒼井優の明るさと貪欲に愛を求める危うさの魅力、職業訓練校の世代や環境を越えた友情、ラストのソフトボール大会で白岩が打ち上げるホームランが爽やかな後味を残します。
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