カトゥ

天使にショパンの歌声をのカトゥのレビュー・感想・評価

天使にショパンの歌声を(2015年製作の映画)
4.0
タイトルだけだと「天使にラブソングを」みたいな感動作を想像してしまうが、もっと生真面目な、フェミニズム的観点からの闘争と挫折を描いた作品だった。
そもそもショパンはそれほど物語の中心に無い。この種の作品でよくあるタイトルのミスマッチに関しては、もう諦めている。でも原題の「La passion d'Augustine(オーギュスティーヌの受難)」のほうが格好良いと思ってしまうし、内容にも合っている。それくらい、オーギュスティーヌ院長の奮闘と挫折、その先の物語には、否応なしに引きこまれる作品だった。まさに受難。

「女性の為に」と(当時としては)現代的な良妻賢母を目指す“新しい教育”に押しやられる、古くからの“つぶしの効かない音楽と信仰”の学校のほうが、女性の社会で闘う力になる、という構造がちょっと珍しい。一種の歴史の皮肉だろうが、しかし教養の持つ力というのは、実務能力よりも世界を変える、あるいは人を変えることがある。その辺りは、世界が総じて不景気に陥っている今だからこそ強調されたのかもしれない。

カナダ・ケベックの風景と重なる数々の美しい音楽。そして真摯な人々の真っ直ぐな視線。心が引き締まる、良い映画でした。
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