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ルカじいさんと苗木のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ルカじいさんと苗木(1973年製作の映画)
4.3
ルカじいさんが梨の苗木を買いに孫と旅するグルジアのロードムービー。名作です。70年代の冷戦を背景に、合理性や近代化よりも、若者の命を大切にし、大地からの命の恵みを長い目で育てることを命がけで教えています。地に足の着いた人生訓と体制批判でした。

ルカじいさんが探している梨は、15年後に収穫できるもの。旅の道中で出会った人たちは、その気の長い話を聞くと驚き、ばかにしたり、尊敬したり、さまざまな反応を返します。

学会に行くアメリカ人研究者たちと相乗りになったバスで意気投合するシーンが楽しい。陽気で真っ直ぐなルカじいさん、カハもおじいさんそっくり。
英語の試験が落第点でもカハはアメリカ人たちと交流しようとがんばります。

カハに昔の恋ばなしたり、力自慢したり、旅先での礼儀も教え、民族衣裳を身につけたおじいさんがカッコいい。落ち込めば、二人で民謡をハモる。いくつかのグルジア映画を観てきましたが、美しくハモるシーンが多く、困難の中でもグルジアの人々が朗らかに振る舞う強さを感じます。

グルジアの人情に出会う、陽気なルカじいさんと愛らしい孫のカハのほんわかした旅のようで、示唆に富み、人生訓だけでなく、効率優先の合理化を進める体制を何気に非難しています。

傷ついた苗を途中で植えてくるのは、何か供養にも見えました。

豊かな人情味あふれるエピソードの数々。急展開するラストのエピソードは、暴力的な出来事に対して若者の命を捧げたことへの絶対的な怒りでしょう。何よりも大切なことは今生きる若者の命だと、卵と鶏の話で討論したことに対して、逆に行動で示します。命を奪わず、命を守れと。切実なメッセージでした。

カハがルカじいさんから学んだことは、未来に生きる若者へのメッセージ。グルジアの良き文化を継承してほしいと、豊かな実りの美しい大地に、二人の美しいハーモニーが響きます。

何とも言えない良い余韻でした。
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