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チップス先生さようならのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

チップス先生さようなら(1939年製作の映画)
4.1
思っていたのと全然違った。てっきり明るく機知に富んだバリバリの熱血先生が生徒を鼓舞し成長に導く、いわゆる学園ものだと勘違いしてました。こんな切ない人生の話だとは。

作られたのが1939年だから、戦地に生徒を送りたくない気持ちを老教師に託したのか。

ラテン語とギリシャ語の新米教師のときから、マイペースで冴えないチッピング先生(本名)。あることをきっかけに生徒との距離が縮まり、いきいきとし始めますが…。

イギリスの全寮制の由緒ある学校の雰囲気が素敵です。先生も住み込みで、先生の家で開かれるお茶会が教育の原点と感じました。

父も祖父もまたその上の曾祖父も、同じ学校に通い、教師たちは、とくに長いこと在職しているチップス先生はすべての生徒とその家系を知っている。<伝統>を受け継ぎ守る良家の子息たち。

強い主張のある作品ではないんだけど、ただただ生徒の成長を見守った全寮制の教師の喜びと哀しみが沁みました。

教師としてできる限りの知識と知恵を授け導き、幸せな人生を歩んでほしいと願うしかできない。ラテン語ギリシャ語を通して、長い人類の歴史に学ぶ生き方と思想の基礎しか与えられない。ジレンマだったと思う。自分の子供だったら、もっと直接的に伝えられただろうに。

奥ゆかしい描き方に余計に哀しみを覚えました。

「チップス先生さようなら」という子役コリーが可愛く(祖父、父の子供時代も演じてます)、目がキラキラしていました。この後に観た「かれらに音楽を」でも不良少年の一味として登場しています。

新任から老教師までを自然に演じ分けたロバート・ドーナットはアカデミー賞受賞しています。
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