ゴマシオ

ヘイル、シーザー!のゴマシオのレビュー・感想・評価

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)
5.0
ケネス・アンガー「ハリウッド・バビロン」
サム・ライミ「XYZマーダーズ」
映画秘宝のmookをついつい立ち読みしてしまう

以上のワードが引っかかる方は、この映画を楽しめると思います。

皆さん、
仕事に出掛けられて、いざ仕事が始まると、予定通りいかない事がままあると思いますが、それでも何とかやり繰りして、1日が終わる頃には、何とかなったなぁ。
という事が、まぁあると思いますが、

これはそんな1日を描いた映画です。

ただし、仕事場は「ハリウッド」です。

主人公のJブローリンが、自身の家庭や仕事に悩みを抱えつつも、自分の仕事場には確かな矜りを持って対応していく様は、スクリーンのこちら側の社会人の方達と、なんら変わりません。

そしてコーエン兄弟の切り口は、今迄とちょっと違います。

同じく、ハリウッドを舞台にした
D・リンチの「マルホランド・ドライブ」よりも、更にわざわざ懐古的な撮影カット・映像の色合い・スクリーンのサイズ等々、まさにあのハリウッドをパスティーシュとして表現方法に選択する懲りようです。

そんな表現なので、
今迄のコーエン兄弟の映画に比べて、
というか、現代の映画の表現方法に比べて、ギミックが効き過ぎて観える印象があります。

特に仰々しい演出を施しているという訳でもないのに、この映像技術の懲りようで、まるで師匠のサム・ライミと組んだ「XYZマーダーズ」の様に、カートゥーンコミック張りの演出に観えるのです。

練りに練られたパスティーシュが、観ている側の印象を惑わせる見事な演出方法に結実していると思います。

それと「ハリウッド」が映画の舞台である事から、非常に細かくネタが映画一杯に散りばめられています。

映画秘宝のmookではありませんが、昔から実しやかに語られてきたハリウッドの様々な噂が、映画の彼方此方に登場して、昔からの映画ファンは、思わずにやけてしまうのではないのでしょうか。

S・ヨハンソン演じる大女優は、まるで「世界3大美女」を演じた、かの大女優並みに田舎訛りを炸裂するハスッパな、それでいて逞しい下品な田舎モノを演じていて、観ていて「ああ〜、そうだったのか。」と、つい信じてしまいそうですw

他にもそういうネタが、挙げていったら本当に切りがない程細いです。
名前だけで示唆されている方なんてもう...(^_^;)
中には、世界の○○○の父の名前なんかもチラッと出てきたり。

その辺りは、
露悪的に描かれている訳でもないので、観ていて胸焼けする事も無く、なんなら無視しても構わない事柄でありますが、
その辺りの事柄が、Jブローリンの日々の仕事を難しくする事になっているのが、我々との違いでしょうかw

ただし
対処の仕方は、我々とほぼほぼ一緒で、何ら「映画的解決方法」を用いていません。

その辺りが、今回のコーエン兄弟の演出で一番面白い所だと思います。

ケネス・アンガーが「ハリウッド・バビロン」で語った、あの絢爛豪華な悪夢の世界の裏側で、
全くスペクタクルなカタルシスを伴わないで、物事は進行していきます。

その対比により、主人公の日常の些末な(でもないけど)厄介事も、まるで映画のカリカチュアの様に感じてくるので、不思議なものです。

そこに、
演出の妙を強く感じて、思わず「やるなぁ」と呟いてしまいました。

今回のコーエン兄弟の映画は、
仰々しい大昔の「ハリウッド」の映像技術を用いる事で、表側の豪華な仕事場の裏側で起こりえた日常の出来事が、スケールの対比が大き過ぎてカリカチュア的な差異に幻惑される事を愉しむ事が出来るか否か、が、楽しめる鍵だと思います。

まぁ、そんな些末な思考実験的な考察は忘れてw
チャニング・テイタムのジーン・ケリー張りの見事なダンスシーンは、ミュージカル映画ファンは必見ですよ❗️

そんな彼が実は、コ○○○○○で、○○○○へ○○するというキッツい皮肉は、「らしい」ですが(^_^;)
ゴマシオ

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