ササキ・タカシ

幕が上がるのササキ・タカシのレビュー・感想・評価

幕が上がる(2015年製作の映画)
3.0
終始むず痒さを感じつつ、同時に熱い感情もこみ上げてくるひどく慌ただしい映画だった。
学生時代、僕も演劇サークルに所属してたんです、大した目的があったわけじゃなく何気なしに入部して、部員も少なかったもんだから2年生で部長を押しつけられて。自分は本作の主人公たちのように真面目に芝居に打ち込んでなかったけど、やっぱ公演やってる最中は楽しくてですね、多い時だと年に6回くらい公演打ってたな。演劇なんてやれる会場とか設備なんてなかったから教室を借りて、暗幕で窓をふさいで暗くして、30人くらいの座席組んで放課後に公演すんですよ、放課後じゃないと客が来ないのね、休日なんかにやっても身内以外誰も来ないから。稽古期間中とか超楽しくてですね、放課後に集まって半分遊びみたいな稽古して、終わったら下宿先のアパートでだらだら飯食いながら遅くまでダベって、それこそほぼ平田オリザの受け売りな演劇論をちょっと真面目に語ったり、サークル内の人間関係のことを不真面目に茶化したり、焼肉食いながら映画見たり、モー娘。のPVみたり、朝までマリオカートやったり、それで翌日の授業サボったり。土日は都内の小劇場に通って、駒場アゴラ劇場にも何度も行ってました、青年団って学生だと1,500円で見れたからね当時、今はどんなんだろ。初めて青年団の芝居見た時は衝撃的で、ソッコーで平田オリザの『演劇入門』って本を買って何回も読んだよ! すんごい影響受けた。いろんな劇団の公演見たけどどれも刺激的で、もちろんハードル高すぎて全然意味わかんないのとかもいっぱいあったけど、ク・ナウカなんて今見たって俺には難しいだろうな、とにかく演劇をやることと見ることで自分の価値観がものすごく拡張されたなって思いますわ。あの頃が一番充実した日々だったって思ってしまうんです。

ネットで「もっとちゃんと演出しろよ本広監督」みたいな批判されてたもんだから「あちゃー」なんて思いながら本作を見たんですけど、思ってたよりもちゃんとした映画でした。少なくとも、学生演劇の気恥ずかしさとかキレイごととか臆面なく描かれてて、真摯な作りだなあと感心。確かに時折、製作者のドヤ顔が透けて見えちゃうシーンがなきにしもあらずだけど、役者さんたちの熱演で帳消しですよそんなの。高城れにちゃんの天真爛漫さがニュートラルにフィクションで活かされてる! 玉井しおりんの頭身がすげえ! 有安! やっぱ有安が好きだな俺、有安の可愛さって何なんだろうねあれ。もちろん百田夏菜子も佐々木彩夏も、みんな良い芝居するのね、良かったわよみんな、また見たいわあんたたちの芝居。

全てのアイドルグループが1本は主演映画を作るべき、映画の中に彼女たちの青春の刹那を永遠に閉じこめるべき、という持論を持っている自分としては、このももクロ主演のアイドル映画はとても良いモデルケースだなあなんて思ってはいるんですけど、興行的にはどうなんだろ、成功だったのかどうだったのか。頼むからハロプロも映画やってくれー。映画はもう懲りちゃってるかもしんないけど、今のハロプロの子たちで映画やってくれー。どんなにつまらん映画でも俺は見るぞー。
ササキ・タカシ

ササキ・タカシ