革芸之介

SAINT LAURENT/サンローランの革芸之介のレビュー・感想・評価

SAINT LAURENT/サンローラン(2014年製作の映画)
4.1
躍動する「色彩」の映画。ベルトラン・ボネロの映画は初めて見たけど、かなり自分の「美学」を持っている監督だと思う。

「色彩」を演出するなんて言ったら、かなり大袈裟な表現になっちゃうけど、監督だけでなく、撮影カメラマン、美術スタッフなど皆が監督の表現したいヴィジョンを共有しているんですね。

本作は「室内」のシーンが多いので、「壁」の色や、家具の配置、鏡に映る登場人物達など「部屋」という空間をしっかりと造形できているところに「美学」を感じた。

私は音楽も好きなので、本作における音楽の使い方も素晴らしい。CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の「 I Put A Spell On You 」がクラブで爆音で鳴り響く。カッコいい。

それとアンディ・ウォーホルの存在。本作に登場はしないけど、ウォーホルがイヴ・サンローランに送った手紙に「俺たちは、20世紀最大のアーティストだ」みたいなことが書いてあって、さらに「今度バンドをプロデュースしたんだぜ!」って、出たぁ!ヴェルヴェット・アンダーグラウンドかぁ。そんで「Venus in Furs(毛皮のヴィーナス)」が流れるんだから大興奮。

しかし、一番言いたいことは、ヘルムート・バーガーの存在。晩年のイヴ・サンローランを演じているけど、この映画は時系列通りに話が進まないので、唐突にヘルームート・バーガー登場。「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ」「家族の肖像」などに出演し、ヴィスコンティに愛された伝説の男。もちろん、今は、おじちゃんだけど、ギャスパー・ウリエルやルイ・ガレルにも負けないぐらい色気のある男だ。さらにヘルムート・バーガーがなんと「地獄に堕ちた勇者ども」をテレビで見ている場面があり、この摩訶不思議な感覚も凄い。だって若き日の妖艶なヘルムート・バーガーを現在のおじちゃんになったヘルムート・バーガーが観ている光景ってやっぱり面白い。ベルトラン・ボネロ監督のヴィスコンティ愛が炸裂した名シーンですね。
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