悪魔の毒々クチビル

隣人-The Neighbors-の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

隣人-The Neighbors-(2012年製作の映画)
3.7
「サイコ野郎め、こっちへ来い」

連続殺人鬼が暮らす団地の恐怖を描いたお話。


韓国のサスペンス映画です。
主演は「シュリ」なんかでお馴染みのキム・ユンジン、またオープニングで殺された彼女の娘ヨソン役と別の棟に住んでいる少女スヨン役をキム・セロンが一人二役で演じています。
あとあらすじで興味持って観たから同じくこの団地に住むチンピラ役で、マブリーことマ・ドンソクが出ていたのを知らなくてびっくりしました。

サスペンスではありますが、今作は開始数分で犯人が誰か視聴者側には分かる古畑任三郎形式となっています。
個人的にはこう言うジャンルでは多少予想がついても、最後まで犯人が分からない方が好きなのでそこは好みの問題ですが残念でした。
因みに犯人役は最近だと「奈落のマイホーム」に主演していたキム・ソンギュンですが、今作でのゴミクズっぷりは良い意味で演技が不快で序盤でヨソンを惨殺するシーンは画面外ながらかなり胸糞でした。その後、ここも描写は無いとは言え子どもをバラバラにする訳だし。
不潔感漂う見た目も如何にもって感じで、最近観た映画の中では一番存在に虫酸が走るキャラでしたね。

主人公のギョンヒがこの事件以降、毎晩死んだ筈のヨソンが帰ってくる幻覚を見るんだけど幻覚なのか幽霊なのかハッキリはしません。一応あらすじでは幻覚扱いされていましたが。
ただ終盤の展開を観るに、どっちなのかは何となく分かるっちゃ分かるしそっちであった方がまだ救いはあるかな。

犯人丸分かりの状態と言いましたが、結構早い段階でピザ屋のバイト君やカバン店の店主は怪しんでいたりと、そこまで緻密な計画殺人は出来なさそうな奴なのでまぁこれでも良かったのかも。
あと警備員のおっちゃんと犯人がとあるシーンで、互いに気付いた事、気付かれた事を察して無言で牽制し合う場面は緊張感あって良かったです。
スヨンとヨソンを同一人物が演じたのも、ああいうエンディングにしたかったなら納得だし、普通に演じ分け上手いなぁと感心しました。
また、いくら犯人が分かっても彼が目を付けたスヨンが生き残るかは分からないので、意外と終盤はヒヤヒヤする場面もありましたね。

そしてあくまで主人公はギョンヒながら、マブリーの存在感がパネェ。
左腕にびっしりタトゥーの入った暴力的な取り立て屋ながら、怪我している人に「おい、大丈夫か」と駆け寄ったり意外と人間味のある一面もあったり。
10年近く前の作品なので、今と比べると腕も細いっちゃ細いんだけど相変わらずのパワーキャラで、中盤ぶちギレた犯人に鈍器で襲われるも難なく返り討ちにしていました。
まぁその過程で罠に掛かって誤認逮捕されちゃうんだけど、終盤「よくも嵌めてくれたなこの野郎」とまたも大暴れ。
もうここの鉄拳制裁のくだりはほぼ「犯罪都市」でしたね。
実際マブリーが居なかったら被害者はもう少し増えていたかもしれないし、実質主人公並みの仕事っぷりでした。

ギョンヒもヨソンの遺品であの訂正メッセージに気付いて号泣するシーンとかかなり刺さったし、娘にそっくりのスヨンを気にかけ護ろうとするシーンはグッと来たんだけどここの流れは結局どうしてああなったか分かり辛い編集になっていました。

ピザ屋のバイト君が「こいつ怪しくない?」と独自に調査していく展開とか中々良かったのに途中で「勘違いかな」と一旦止めてしまったり、とある人物が後ろめたい過去を抱えていて、それに対する最終的なけじめはそれで良かったのかとか気になる所はいくつかあるにはありました。
あと最初と最後の字幕でアレを説明する演出は何だったんだろう。ぶっちゃけちょっと浮いていた。

でもオープニングで「あ、そっちか」とちょっとガッカリした割には、トータルで大分楽しめました。
陰鬱なサスペンスの世界でも、その二の腕で悪をぶっ飛ばすマブリーとか言う唯一無二の存在の強烈さも改めて認識出来たし。