悪魔の毒々クチビル

デッドゾーン -殲滅領域-の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

デッドゾーン -殲滅領域-(2022年製作の映画)
3.0
"I always win."

正体不明のウイルスによりゾンビに支配された世界で、ワクチンを探し求める特殊部隊のお話。


一時期話題になった気がしなくもないシロクマパニック映画「アンナチュラル」を撮ったハンク・ブラックスタン監督によるゾンビ映画です。
そして主演はなんとマイケル・ジェイ・ホワイト。
MJW主演のゾンビ映画って時点で、皆ワクワクするよな!

まぁ「アンナチュラル」とかその他低予算映画を手掛けてきた監督作なので、悪い意味で安定した低クオリティ作品に仕上がっちゃっていたんだけどね。

まず今作ではワクチンがある場所がかつて軍がゾンビ一掃の為に放射線爆弾を放った地域、通称"デッドゾーン"にある為ここに向かうのは生身では不可能。
と言うわけで全員ゴツいアーマーを装着して行動するんだけど、この設定のせいで誰が誰だか非常に分かりにくいです。
一応MJWのヘルメットには赤いラインが入っていたりと、微妙に違いはあるんだけどそれに気付く頃には登場人物も大分減っています。
アイアンマンスーツを着たスタークさんみたいに、各々ヘルメット内の様子を頻繁に映したり安全な屋内ではヘルメットだけ外したりはしているんだけど、MJW含め部下達も屈強な見た目をしているのにそれが全隠れなのは勿体なかったですね。

今作のゾンビは「28日後」タイプのアグレッシブな方で、集団で走って襲い掛かる様が恐怖…な筈ですがメイクとかがチープなのはまだ良いとして演出までショボいのは如何なものかと。
序盤に集団でやってくるシーンなんかは、その様子をSEなり足音なりゾンビの荒い息遣いなんかで盛り上げれば良いのに、地味なベースメインのBGMをバックに思いの外静かに描かれていて拍子抜けもいいとこでした。

装備に関しても急ぎの任務とは言えアーマーがまさかの未完成の状態で行かされるのもね。
案の定、放射能から身を守る事は出来てもゾンビにアーマー越しでもあっさり腕を噛みきられる紙耐久仕様だったし。

ただ個性的な要素を挙げるとすれば、かなり早い段階でワクチンを確保し、しかもそれが本物だったので誰かがゾンビに噛まれてもワクチン接種で元通りになれちゃう所でしょうか。
数に限りがあるとは言え、このワクチンのお陰で今作ではゾンビ映画ながら味方が誰もゾンビ化しないと言うかなり珍しい作品となっております。
代わりに突然変異して凶暴化したゾンビが一体ボスポジションとしてやって来ますが、これはまぁ有りがち。

MJWに期待していたアクションシーンはあるにはあるけど、多くはないしアーマーを着ている状態なのでぶっちゃけ誰でも良かったです。
今でもある程度変幻自在な蹴りとか観た感じ、ちゃんと彼が自分でこなしていたんだろうけど。
ボスゾンビとも終盤戦いますが、もっと得意の蹴りとかを活かした戦闘にして欲しかったです。
初登場シーンで上半身裸でサンドバッグを殴っていましたが、身体つきも良かったし普通にパンチのキレもあったしで尚残念でした。

そもそもMJWって全盛期ばりの飛び蹴りはもう出来なくとも、ちゃんと素早い動き自体はまだイケるんですよね。
割と最近の映像で彼が射程外から射程内に一気に移動して放つ蹴りを解説しているのを以前観たんだけど、めっちゃ早いです。
軸足で射程内まで体重移動してからの膝あげて蹴りを放つ速度が半端じゃなく、素人だったらまず避けられないレベルです。
だからこそ映画で動きが制限されまくっているのがめっちゃ勿体なと言うか、流石にもう少しスピーディーに出来るとは思うんだけど何で映画だとここ最近はイマイチな動きばかりなのか。

ゴアシーンもあるっちゃあるけどそんな大したもんでもないし、感染の危険性が非常に薄れる設定が災いしてゾンビ映画らしさも逆に薄まるし安っぽさ全開だしで褒められるような作品では無かったけど、そんな中でもしっかり演技していたMJWが良かったですしギリ酷すぎとまでは行かない作品でした。
あと序盤で「もしアーマーが失敗作だったら着地前に死ぬから安心しろ」って言われたMJWの部下達の(・・;)な表情が面白かったので、このスコアで。