継

白夜のタンゴの継のレビュー・感想・評価

白夜のタンゴ(2013年製作の映画)
4.0
“タンゴの起源には誤解がある、フィンランドが起源さ。
俺は怒っちゃいない... いや、少し怒っている” と、
冒頭でムスッ(=`ェ´=)と のたまうアキ・カウリスマキ。

それを聞いて黙っちゃいられないのが、本家を自認するアルゼンチンのタンゴ奏者3人。
“だったら俺たちが確かめに行ってやる(`◇´)ゞ!”

そんなわけで、
大都市ブエノスアイレスの喧騒を離れ、森と湖と多くの島々からなる大自然・フィンランドへー。
本作はドキュメンタリー形式でお送りする、ほっこりロードムービーです。

森林を切り開いた真っ直ぐな道を、3人を乗せた小さな真っ赤な四角い車が “ぶーん” と走る。
道を間違えて立ち往生すると、サウナトレーラーを牽引したバイク(!笑)がやって来て前を先導する、、そんな、のどかな光景が微笑ましくて良いのです。

アルゼンチンのタンゴ、特にピアソラのそれはほとんど鑑賞用と言えそうなフォーマルなもの。だけど本作の、ブエノスアイレスや国内の街中で愛されるカジュアルなタンゴは、一定の様式を持った “ダンスミュージック” 。
バンドネオンは蛇腹を伸縮させて鋭いスタッカートと流麗な旋律を奏(かな)で、
“苦悩や郷愁を共有してきた” というその歌詞は、一様に憂いを帯び、
華麗な衣装を身に纏った男女がまるで恋愛の駆け引きの様に踏む、複雑なステップの技巧。
かたや、
“携帯電話が普及するまで口数が少なかった” なんて言う、物静かでシャイな国民性のフィンランド人が “女性と密着出来るから” 、“気持ちはシンガーが歌ってくれるから”と、単純なステップながら満面の笑みで踊り、
着ぐるみを着て演奏されるタンゴに子どもたちは嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。
それは、はた目には年配者が集うダンスパーティーだったり、お遊戯会で催される出し物に過ぎないんだけれど、そこで流れるタンゴは確かに人々を笑顔にし、日々の暮らしに当たり前のように根付いていて。

湖の畔(ほとり)で農業を営む夫妻の、音楽教師だったという奥さんが披露する(傍らで旦那がギター伴奏する)情感豊かな歌が素晴らしくて素晴らしくて心を打たれました。

…気がつけば、“コッチが起源(`◇´)ゞ” なんてこだわりはどこへやら。 3人と本作を観た人は、作り手とカウリスマキに気持ち良く一杯食わされたようです。

その形は違えど、タンゴを愛する気持ちは同じ。
スタイルが違うからと非難するのでなく、違いは違いとして尊重して認め合えば、互いに分かち合えるー。
そんな寛容さを持ちたいものです(^ー^)。
継