継

アディクションの継のレビュー・感想・評価

アディクション(1994年製作の映画)
4.2
夜のニューヨーク, ダウンタウン.
大学の帰路, 信号待ちするキャサリン(リリ・テイラー)は見知らぬ女に声をかけられる。
キャサリンが訝しげに応えると女は彼女を暗がりへ引きずり込み, 助けを請うその首筋へ顔を埋める。
為す術なく呆然と立ち尽くすだけのキャサリン。
女は唇を伝う血を拭いながら「これからどうなるか, その内に分かるわ」と言い放ちその場を立ち去る…

1994年公開,モノクロで撮られたヴァンパイア・ホラー。

その夜以来, 身体に変調をきたすキャサリン。
貧血と診断された症状とは最早レベルが違う, 本質的な「血」への渇望は紛れもなく覚醒したヴァンパイアの証し。
餌食を求め夜の街を彷徨うその宿命を, 薄れゆく人としての罪悪感が抑え込もうと葛藤するが,
止めたくても止められずエスカレートする欲望はaddiction(依存症)にも似て, 彼女は精神的にも蝕まれてゆく。。

元々大学で哲学を専攻し, 博士論文の課題に取り組んでいたキャサリン。
人類が犯した大罪の歴史(ベトナム戦争の無差別虐殺, アウシュビッツのホロコースト)を学び, 講義ではサルトル『存在と無』(黒板にはハイデガー等の名も書かれている)を論ずる教授に師事していた彼女だが,
変貌する自身のその苦悩の過程で己の邪悪な行為を肯定するが如く, 人は如何に歴史や哲学から学ぼうが本質的に変わらないのだと考えを覆してしまうー。

🧛✟💉

モノクロームの鮮血, 麻薬(或いは時代的にはAIDS?)を隠喩する注射器を使った採血/注射の描写, 上述の哲学者の他にもニーチェやダンテ, 聖書はもとより果ては『裸のランチ』のバロウズまで引用する衒(げん)学的な哲学問答。
これヨーロッパの映画なら絶対クラシック使うよなって思うんだけれど, NYを根城とするフェラーラは現在性の顕示と一介のジャンル映画に扱われるのをなかば拒否するようにヒップホップを鳴らす, それもマリファナ摂取を公言するCypress Hill “I wanna get high” だったりするから流石というか。
永久に生きるヴァンパイアを既存の価値観が揺らぐ現代に描いて実存を問うているのか?😹チガウトオモウョww.
人間の心の奥底に深く根を張る邪心/ダークサイドとの葛藤みたいなものを, 吸血鬼ムービーの体裁を借りて知的かつスタイリッシュに(陳腐,笑)描かんとしたようにも思えます。

中盤のワンシーンだけに登場して映画の様相をガラリと変えるクリストファー・ウォーケンの異様な存在感と, それまでの静から一気に動へ転じて “狂宴” と化すクライマックスに啞然呆然。
ひけらかしみたいな引用↑や, やっぱりkeyとなるキリスト教の描き方は正直鼻につくwwんだけど,『バッド・ルーテナント』よりは好み(笑)で観返したくなるからソフト📀保有。
キャサリンの誘いを毅然と断った信心深い男や神父を含めラストは様々な解釈が出来て面白く, 結構好きな映画です(^^)。
継