Bellissima

ドライブイン蒲生のBellissimaのレビュー・感想・評価

ドライブイン蒲生(2014年製作の映画)
4.0
『ドライブイン蒲生』@渋谷イメージフォーラム

怠惰な父親に育てられ理不尽な人生に絶望しグレていく姉のくすぶる苛立ちと当惑、父と姉の葛藤の板挟みとなる弟の優渥な眼差し。客観的で溺れすぎない視点で家族とは何かを問い直す。得体の知れない所在の無さ、閑散としているのに骨太のドラマが残る。哀切な味わいの良作。

父親をどんなに忌み嫌おうとも家族に帰着してしまう血の繋がりという因果宇宙。過・去/現・実を追いかけるような問答。映画が繰り返し語ってきた普遍的な主題に新たな視座を与えたことに感銘。日常の綻びに絡めとられていくやりきれなさをこれほどまでに表現した作品も稀である。

要所要所で情感を押し上げていくギター音。かと思えばぶっつりと水を差したかの様に音が止み熱が引いていく。地方で燻るということの閉塞感、精神的にも物理的にも出口がないという感覚。画面の内と外にやり場のない退屈が充満する。中和されない異化効果が余韻を一層強調させる。

世界を敵にまわして闘っている姉:沙紀の声にならない泣き声。それは「私なりに宿命と闘う方法を選んできました。負けません。」宣言とでも言ってるかのよう。感情におぼれぬ現実的で醒めた眼差しの裏に滲む心傷の痛みを黒川芽以が演じきる。(デラぜっぴん!!)しばし詠嘆。

姉の傍らで何時も、怒るでもなく、いさめるでもなく半笑いで守護霊の様に姉を見守り佇む弟:俊也。染谷将太は"表立たず底に潜む感情"を巧みに表現。役柄を必要以上にデフォルメしない揺るぎない自信を感じる。浅野忠信以来の自然体に希代の逸材と再確認。すげ!
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