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ニンフォマニアック Vol.1のBellissimaのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
4.5
『ニンフォマニアックVol.1』@ヒューマントラストシネマ渋谷

ひゃーおもれー。常々 私は笑いの感覚(ツボ)が違う人とは深い所で繋がれないなぁと思ってるですよ。特に下ネタは明確にそれがでる。フォントリアーは笑いのセンスありありですよ。かなり。自分にこんなにフィットするとは思わなんだ。とはいえフォントリアー初心者入門作としても最適でコレがダメなら他もダメと思っていい踏み絵的作品。後編早よ!早よ!

路上に傷だらけで倒れているジョー(シャルロット)を見つけた初老の独身男セリグマン(スカルスガルド)は自宅に連れて帰り介抱する。回復したジョーが自身の数奇な物語(幼少からの性への強い関心、肉体関係を結んだ男性遍歴)色情狂になった経緯を語り始める。

ジョーの過去エピソード(半生)を積み重ねて行きつつ現地点に戻っては2人の対話が交わされる。これ対話であって対話でない。外身は親身になってカウンセリングをしているかのようだが、体に染み付くネガテイブ気分の発振装置のジョーの話をすんなりと呑み込む事が出来ないセリグマンは自らの知識を総動員して理解を試みる。セリグマンがフライフィッシングや複数の男との関係をバッハの賛美歌ポリフォニーに置き換えたり、フィボナッチ数列を出してきたりのメタファーの嵐がちょっとおかしな事になっていく。インテリ爺の話が見てる側の頭に全然入ってこない始末。密室に居るのは2人だけなのに互いが壁に向って喋っているかのような平行世界。モノローグの会話、視線を合わせず話は動いているのに意味だけが剥離していく。このやり取りが可笑しくて堪らないが、お笑い偏差値としてはかなり高め。

編集テンポが早くサクサク進んでいくから、濡れないし、勃たないし、イカない、イカせない、この辺り欲動の梯子を外す外す。いけずだわ。スキャンンダラスな予告のイメージ先行で来た輩はフルスウィングがブンッと空を切る おもっきし。わりーけど。

ピストン運動をカウント表示、バルテュスの絵画を揶揄したポージング、幾多の男性のパーツをジョイントして初体験相手を妄想するグラフィックとトリアーのアート嗜好がちょいちょい挟まれて 彼の元来持っているセンスの良さがいい方に振れてる。ホント愉しいんだこれが。

ジョーの性遍歴やユマの怪演などを挟み 一つの軸である恋心も描かれていく。体験相手のジェローム(シャイア・ラブーフ)との再会で肉体関係を拒否したことで逆にジェロームへの愛情をどんどん募らせていく(彼のその手の中の所有物になって自分を扱って欲しいと欲する。それが愛と気づいた時にはもう相手は側にいない)〜運命の再々会での衝撃告白でいきなり緞帳が降りてくる。閉店ですよ、お客さん。この振りからのハードコア展開後編の期待値は高まる。人間の性(さが/せい)の話なのか、セックスと愛の関係性の話なのか事態の新しい地平が示めされるのは後半に持ち越しなわけで。さて、どうなるか


雑感 不協和音流れていた重苦しい過去作から明かに面白がらせようしてる「お笑いセンス」が本作では巧く作用してました。「愛、アムール」で本質変えず悪意をマイルドに見せる表現方法に変容したハネケの様にトリアーはここを突き抜けとんでもない境地へたどり着く予感をもたらしています。

雑感 その道極めた探究者ジョーと博識なセリグマンとの哲学問答のやり取りも「共通言語としての知識を持ち合わせてない」という所に帰結するのかな。両方の素養を持ち合わせている人は中々いないわけで、その噛み合わせの悪さが面白グルーヴ静なるバイブを醸し出す。
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