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アッテンバーグのbennoのレビュー・感想・評価

アッテンバーグ(2010年製作の映画)
4.0
アティナ・ラヒル・ツァンガリ監督作品…。

ヨルゴス・ランティモス製作・出演…そして主演はヨルゴスの奥様アリアン・ラベド…。


冒頭で映し出されるのは…主人公マリーナ(アリアン・ラベド)と親友ベラによる女同士の濃厚なキスシーン…実際は経験豊富な親友ベラによる『キスのレッスン』…故にとてもぎこちなく滑稽…。

昨今、増えつつあるasexual(Ace)=無性愛(性的関心がない)やaromantic(Aro)=恋愛感情を持てない…。


23歳のマリーナは海岸沿いの街で建築家の父スピロスと暮らしています…

人間嫌いの彼女が好きなことは動物学者デヴィッド・アッテンボロー(因みに、兄は映画監督のリチャード・アッテンボロー)のドキュメンタリーを観ること…。

タイトルの『Attenberg(アッテンバーグ)』は「Attenborough(アッテンボロー)」をベラが間違えて発音したもの…。

マリーナとベラ…ふたりの独自のコミュニケーションはある種、獣同士のようにしばしば理性を失い、唾を吐いたり、雄叫びをしたり…色違いのワンピの双子コーデで奇妙奇天烈なステップを踏むシーンが随所に挟まれるのもクセになる面白さです…。

男性経験の無いマリーナはベラに性に関する相談を重ね、エンジニア(ヨルゴス・ランティモス)を相手に実践を試みます…ヨルゴスさんマッパで頑張ってます…。

また、ふたりは友人関係にありながらもお互いに何処か軽蔑しているところがあり、テニスのシーンではそれが象徴的…噛み合わない球のやり取り…ふたりの関係性が失われていくよう…。

一方、マリーナには病で死に臨む父の存在が…受け入れ難い現実に向き合う彼女の姿は廃墟のような工場街と重なり虚無感に満ちています…そして彼女はベラにある頼み事をします…。


今作では、気持ちを盛り上げるようなSuicideの♬ Ghost Rider や Be Bop Kid…フレンチシャンソンFrançoise Hardyの♬ Le Temps de L’amour など素敵な曲も効果的に使われています…。

また、真っ青な地中海に白いブロックのように画一化された街並み…ギリシャの美しい映像も見どころ…。


当たり前の悲しみに暮れるシーンではなく…寂寥感の中、父の願いを叶えるべく粛々と娘としての役割をこなすマリーナ…冷淡なほど無駄無く美しくとても切ない…。
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