逃げるし恥だし役立たず

ローン・サバイバーの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)
3.5
2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯で偵察活動中の四人のシールズ隊員は、或る一つの決断によって、二百人を超すタリバン兵の攻撃に晒されることになる。世界最強の米海軍特殊部隊ネイビーシールズ創設以来最大の惨事と言われた「レッド・ウィング作戦」で四人の兵士の過酷な戦いを描く戦争アクション。極限の状況から奇跡の生還を果たした唯一の隊員元隊員マーカス・ラトレルが執筆して、全米ベストセラーとなったノンフィクション『アフガン、たった一人の生還』を原作に映画化。
2005年6月、タリバンの幹部アフマド・シャーの暗殺を狙った“レッド・ウィング作戦”のため、米海軍の特殊部隊ネイビー・シールズから選抜されたマーカス・ラトレル一等兵曹(マーク・ウォールバーグ)、マイケル・マーフィ大尉(テイラー・キッチュ)、ダニー・ディーツ二等兵曹 (エミール・ハーシュ)、マシュー・アクセルソン二等兵曹(ベン・フォスタ)ら四人のチームはアフガニスタンの山岳地帯に乗り込むが、電波状態が悪いために現地で孤立する。更に遭遇した現地の一般人達を巡る、或るある決断により二百人超のタリバン兵の攻撃に晒される。孤立化した四人の部隊は二百名のタリバン兵に命を狙われる絶体絶命の状況に陥る中て、ようやくエリック・クリステンセン少佐(エリック・バナ)率いる支援チームを乗せたヘリが現地に送り込まれるが……
凄惨な戦闘シーンの迫力と強固な仲間意識、そしてアフガニスタンの親米派住民・グーラーブの高潔さと勇気を物語の軸とした、唯一の生存者マーカス・ラトレル一等兵曹役をマーク・ウォールバーグが演じる、実話に基づいた戦争サバイバル・アクション映画である。
冒頭のシールズ達を精神的にも肉体的にも殺戮マシーンに変える壮絶な訓練シーン、序盤の基地での仲間達との緩い描写、飄々と岩場を駆け下りる山羊飼いの少年のシーンが、後の展開の効果的な下味となって、前後左右から迫ってくる銃声と足音により多勢に囲まれる恐怖感、急斜面の岩山からの落下に次ぐ落下による身体と岩々の衝突音、追われては山を下る兵士たちの表情、日の光に照らされた虚ろな青い瞳など、山岳地帯での戦闘シーンの絶望的な描写は、観客をも戦場に巻き込むような映像的な迫力と細部の説得力がある。特に兵士が岩場を転げ落ちるシーンは従来の戦争映画になく、描き尽くされたジャンルの映画の中で、オリジナリティの源泉と新味になっている。
遭遇した遊牧民に対する選択、彼らを解放した後の選択、護衛無しのヘリで救援に来た少佐の選択により、最悪にも三人の仲間やヘリで救援に来た仲間、多数のタリバン兵が無駄に命を落とす羽目になるが、判断ミスと言うよりは不運な偶然と優柔不断が招いた悲劇であり皮肉である。所謂、米国政府の大義が見出せない軍事介入からマッチポンプで他国に山火事を起こし、現地の米国兵士が巻き添えを喰らいながらも火事場救命では誰も助けられず大火傷、過酷な状況から生還出来た理由も米国云々以前の二千年に亘る「パシュトゥーンの掟」に拠るもので、勇気と感動の実話と云うよりも、無謀と絶望の実話と言える。
埃だらけで傷だらけの愛嬌ない髭面は判別不能に近い状態なのだが、まあ此れ程までに耐えられる人体って凄いね…