OHara

それでも夜は明けるのOHaraのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
5.0
機内で鑑賞。
こんなことって本当にあるのかと衝撃的だった。ちょうど主人公が誘拐されたワシントンにも足を運んでいたから妙に生々しく感じられた。
昨日まで市民権を得ていた主人公が誘拐されて、名前も権利も奪われて、希望をありとあらゆる形で潰されていく様は思わず目を背けるほど。
カンバーバッチが演じていた牧師さんにがんばって気に入られよう、と身を低くしつつある姿は自衛本能なのかな。ポール・ダノに歯向かった挙句首をつられたまま長らく放置されて。他の黒人はそんな姿は日常茶飯事なのかまるで無視。それが当たり前となって麻痺していくんだろうなと思ったら悲しくなった。ベネディクトカンバーバッチが演じてるのは主人公を初めに買った牧師。説教の身を低くするものは…のくだりは、黒人たちのことを思ってことなのかな?そしてポール・ダノはくそ野郎を演じたらピカイチですね。
しかし、今回の見所はファスベンダー。最後まで誰か分かりませんでした。本当にクズのクズでした。でも南部ならこんな人もっとゴロゴロしてるんだろうな。彼のむち打ちを惨すぎるし、夜中のダンスも頭がおかしいとしか思えない。そのくせ自分の奴隷の女に手を出して妻とはギクシャク。妻は奴隷にあたるって。奴隷役の彼女(名前ど忘れ)は本当に名演技だったと思います。自分を殺してくれ、と頼むところや、むち打たれるシーンとか真っ白な石鹸をさしだすシーンとか。
最後の10分までひたすら悲惨なシーンが続いて、希望が時々あってもすぐに消えていって…と見てて苦しかったです。これが実際にアメリカであったこととは信じられない…。とにかく、最後はブラピ演じるカナダ人のおかげで無事家族と再会できるんですけど、やっぱりそれは彼が地位が確立している黒人だったからできたことなのであって。普通の黒人なら実際そんな奇跡みたいなことは起こらない…。
素晴らしいキャスト(アフリカ系の俳優女優勢の熱意と白人のキャストの徹底的なクズキャラ具合が凄い)脚本、重々しい歌など学んだことは沢山ありますし、本当に素晴らしい映画だと。それほど大昔じゃないところもポイント。南部の黒人の扱いに対する描写は至るところで確認できます。
公開されたらもう少し構えたまま一度映画館に足を運ぼうかと。
でもみて絶対に損はない映画です。重いですが、疲れません。
観た時はアカデミーにノミネートされているとは知らず、これアカデミー賞とれる勢いだなあと思ったりしました。
そしてまさかの授賞 笑
納得の結果ですね。おめでとうございます。
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