ミッキーミカラーノ

鑑定士と顔のない依頼人のミッキーミカラーノのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

良かった、けどあまりにも残酷、というのが第一の感想です。

伏せられている部分が多くて、クレアって実在する?とか周りの人の言葉ってどこまで信頼できるの?とか疑問がポンポン浮かびました。バーシルがクレアを初めて覗き見した時、彼女がオートマタ(姿を見せない、けど受け答えは正確にできるから)ではないかと予想としてたので、実在するんだとびっくりしました。けど幻想じゃないのかな?と疑ってると、ロバートとも会話している。謎が解明されてると次の謎、と言うふうに話がテンポよく進んでいき見ていて面白かったです。あと普通に恋に浮かれてるヴァーシル可愛いなと思いました。

見終わったあと、友達と絵を盗むにしてはやり方が遠回りすぎるのではないかと話しました。実際人がいないとこを見計らって、さっさと盗んでおけばいいのに。愛した人に盗まれた、という筋書きを考えたのは、というか全ての筋書きを考えたのはビリーではないか、つまり真の黒幕は彼だったのかなと考察します。ヴァーシルをどん底に落とす動機があるのは彼ぐらいしかいなかったはずなので。まあビリーもちょっと逆恨みな気がするのですが、ヴァーシルの普段の感じから察するに、言い方がまずかったんじゃないかなと予想します。あと踊り子の作者は多分ビリーだけど、それに気づかなかった。ヴァーシルももう少し他者を思いやれたら良かったのに。

可哀想な童貞おじいさんが、可愛い女の子に騙され、周りのものに裏切られて、ボロボロになる。あまりにも女性経験がない年老いた男が若い女にころっと恋に落ちるのは少し滑稽というか見ていて「いやこんな若くて可愛い女の子がいくら恩人とはいえお爺さんに恋する?!?!」と突っ込みたくなりました。けど、ヴァーシルが最後「ナイト&デイ」でクレアを待つシーンは心打たれました。裏切られたことが頭でわかっていても、心のどこかでは彼女と彼女を愛した日々を信じている。その信じる心がとても綺麗だと感じました。このラストはとてつもなく哀しくなりますが、同時に美しい。おひとりですか?と聞かれて、連れを待っていると答える。1人で延々と愛した女を待つ。けど、いつまでも来ない。来なかったからすっかり病院で抜け殻のようになったのでしょうが、プラハまで行ってあの店で待つ時、彼の愛が本物になったのかもしれません。